2022年4月から成人年齢が18歳以上と改正されます。
「成人式はどうなるのか」「タバコやお酒はどうなるのか」等、多くのニュースで取り上げられていますが、税金でも20歳以上から18歳以上に改正される項目が多くあります。ただ、税の世界では「22歳」と「23歳」の壁が重要。
今回は22歳と23歳の3つの税制の違いについて解説します。
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第1の壁 所得税・住民税の扶養控除
所得税では、生計を一にしている控除対象扶養親族(16歳以上)の合計所得金額が38万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)である場合に、所得税・住民税の所得金額から扶養控除を差し引くことができます。
原則として年末時点の年齢で判定し、16歳以上19歳未満は38万円(住民税では33万円)、19歳以上23歳未満は63万円(同45万円)、23歳以上70歳未満は38万円(同33万円)、70歳以上は48万円(同38万円)、70歳以上の同居老親は58万円(同45万円)となります。
年末時点で23歳の人の多くは社会人として給与収入を得ていますので、扶養控除の対象外となるケースが多いと思われますが、23歳以上の学生も相当数います。
この場合、控除額は22歳までと比べて所得税では25万円、住民税では12万円少なくなります。
たとえば、課税所得が330万円超695万円以下であれば、所得税率が20%、住民税率10%ですので、子どもが23歳以降も学生である場合、22歳までと比べて、所得税が5万円(25万円×20%)、住民税が1.2万円(12万円×10%)、合計6.2万円の増税となります。
なお、22歳まで学生、23歳から社会人となり、扶養控除の対象外となる場合、
扶養義務者の所得税は12.6万円(63万円×20%)、住民税は4.5万円(45万円×10%)、合計17.1万円の増税となります。
第2の壁 2020年以降、給与収入850万円超の場合の給与所得控除額
給与収入を有する人は、給与収入金額から給与所得控除額というみなし経費を差し引いた金額が所得税、住民税の計算の基となる所得金額となります。
2019年までは、給与収入が1,000万円を超える場合、最高220万円の給与所得控除額を差し引くことができますが、2020年から給与所得控除額が一律10万円引き下げとなり、さらに給与収入850万円を超える場合の給与所得控除額は原則195万円となります。
ただし、850万円を超える収入を有していても、23歳未満の扶養親族を有する世帯は、給与収入が1,000万円までは所得金額調整控除により 、最高210万円を控除できます。
言い換えると、850万円超の給与収入を有する者が23歳以上の学生を扶養する場合は、19歳から22歳までの学生を扶養する場合に比べて、23歳以上の扶養親族を有している場合には、給与所得控除額が最大15万円(210万円-195万円)減少します。
課税所得が330万円超695万円以下であれば、所得税率が20%、住民税率10%ですので、22歳までと比べて、所得税が3万円(15万円×20%)、住民税が1.5万円(15万円×10%)、合計4.5万円の増税となります。
なお、個人住民税は平成31年度からの増税となります。
23歳以上の学生を扶養している場合、第1の壁崖と合わせると、所得税で8万円、住民税で2.7万円、合計10万円を超える増税となります。
第3の壁 教育資金の一括贈与の非課税制度
原則として30歳未満の者(2019年4月1日以降は前年の合計所得金額が1,000万円以下である者に限る)が、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合、1,500万円(学校以外は500万円)までは)贈与税非課税となる制度があります。
つまり、学校の入学金や授業料、塾やスポーツ等の習い事等の費用に充てるために、まとまった資金の贈与を受けて、支出した場合、贈与税非課税となります。
なお、2019年7月1日以後、学校等以外に支払われる金銭で、受贈者が23歳に達した日の翌日以後に支払われるもののうち、教育に関する役務提供の対価および施設の利用料、スポーツ・文化芸術に関する活動等に係る指導の対価、これらの役務提供または指導に係る物品の購入費は除外されることになります(教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講するための費用は除外しない)。
ざっくり言えば、学校に支払われる金銭は従来とおり贈与税非課税の対象となりますが、学校以外の費用については一定の制限がかかることになります。
増税回避のポイントは制度を活用した老後資金準備
2019年10月から消費税の増税が予定されていますが、子どもを扶養している場合には、消費増税以上にインパクトが大きいのが、養っている子が22歳から23歳になった場合や、子どもが独り立ちした場合の増税。
この負担を回避するお勧めの方法が老後資金準備。
iDeCo(個人型確定拠出年金)のほか、自営業であれば国民年金基金、自営業や小規模企業の役員であれば小規模企業共済の掛金は所得控除できますので、増税を回避しつつ、老後資金を効率的に準備できますので、検討してみてはいかがでしょうか?
この記事のライター
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益山真一
ファイナンシャルアカデミー認定講師。「お金の教養スクール」で教壇にたつ。家計改善を得意とするファイナンシャルプランナー。國學院大學経済学部の非常勤講師も勤め、研修・セミナーの実績も多数。経済、景気等への感度が高く、株式投資では18ヶ月連続増益の経験もある。