ポートフォリオとは、自身の保有する(保有を予定している)資産の組み合わせやその比率のことをさします。
資産を安全に形成する上でポートフォリオを作成・管理することは非常に重要です。また、富裕層と言われている人たちは、経験を通じてポートフォリオの重要性について理解し、しっかりと戦略をたてています。
今回は、富裕層の多くの人たちが実際に行っているポートフォリオの作り方について解説していきます。
Contents
富裕層ってどんな人?
「富裕層」とはどんな人たちを指すのでしょうか?富裕層の定義から入っていきたいと思います。富裕層とは、資産を1億円以上所持している人のことをさします。日本には、245万人の富裕層がいると言われています。245万人という人数の比率を分かりやすく言うと、朝7時の電車(1車両)に8人富裕層が乗っている計算になります。※1車両に平均200人乗っている想定で算出。
では、世界に目を向けてみましょう。
世界中で最もお金持ちなのは誰で、その人はどのくらいのお金を持っていると思いますか?
第3位:W・バフェット(7.4兆円)
第2位:カルロス・スリム(7.8兆円)
第1位:ビル・ゲイツ(8兆円)
※資産額は、1US$=100円で算出 ※2017年2月当時
1位のビル・ゲイツになった気分でこの額を体感してみましょう。これから50年後まで生きるとして、全部お金を使い切るには毎日いくら使えば良いか計算してみます。1年間に1,600億円、 毎日4.3億円使える計算になります。実は毎日4.3億円使うため現金を持ち歩くのは大変です。なぜなら、4.3億円は43kgにもなるからです。また、たった1つの通貨の現金だけの場合、世界の経済が暴落したときに一気に自分の資産もなくなってしまうリスクもあります。そこで生まれたのが、富裕層の資産管理術「守るポートフォリオ」なのです。今日は、様々な経験してきた富裕層から資産の守り方を学びましょう。
富裕層の資産管理において「天敵」とは?
資産を守るという戦いに負けないためには、まず「敵=リスク」を知る必要があります。お金が大きく減らす「リスク」には大きく分けると3つあります。
・市場リスク
・カントリーリスク
・自己リスク
それぞれのリスクを見ていきましょう。
市場リスクとは?
世界の経済が不景気になったり、株価が大きく下落したり、など、投資に関わる市場が変動することで損失が出るリスクのことをさします。具体的には、株価暴落、不動産価格の下落、取引先の倒産などの現象が該当します。
カントリーリスクとは?
政治や経済が不安定になったり、治安が悪化して経済活動が停止したり、増税になったり、などで損失が出るリスクのことをさします。具体的には、インフレ、円安、人口減少、増税、テロなどの現象が該当します。
自己リスクとは?
経済や国と関係のない自分の身の回りの出来事が、経済的な不安定をもたらし財産を失うリスクのことをさします。具体的には、離婚、血縁関係者の不祥事、ビジネスの失敗、詐欺などの現象が該当します。このような3つのリスクを回避するために、「守るポートフォリオ」が存在するのです。
ポートフォリオとは
ポートフォリオとは、資産を分散し維持管理することです。それぞれのリスクに対して、実施することは6つあります。
6つのステップをそれぞれみていきましょう。
市場リスクに備える2つの方法。
通貨ポートフォリオ(通貨の50%は、外貨へ分散投資する)
2007年当時のロンドンでは、なんと1ポンド248円でした。
サンドイッチ屋さんで、コーヒー2.5ポンド、サンドイッチ3ポンドです。日本円で今なら1360円しますが、2017年なら700円で購入できます。このように各国の通貨は常に変動しているため、複数の通貨を持つことでリスクの分散を狙うのです。目安としては資産の50%を外貨で持つことをおすすめします。
資産ポートフォリオ(資産を50%は、債権へ分散投資する)
資産を債権へ分散することもリスク分散としてはおすすめです。
理由は通貨ポートフォリオと同様ですが、景気と債権と株式の関係は以下の図のように、相関関係になっています。そのため、資産の100%を株式で持つよりは、50%を債券にすることはリスクを回避するのには非常に重要です。
カントリーリスクに備える2つの方法。
安全資産(金=ゴールドをポートフォリオに組み込む)
安全資産として、金を10%はポートフォリオに組み入れましょう。
金が富裕層に選ばれる理由は、希少性があるからです。今まで、人類に掘り出された金は、プール3杯分と言われています。しかも、残りの金はプール1杯分しかないようです。金地金(金塊)1kgの金額価値は4,922円です。※2016年7月22日現在
つまり、4,922 ✕ 1,000=492万円にもなります。
もうひとつ、金が富裕層に好かれる理由があります。それは、「ドル」と逆の値動きをする点です。世界の基軸通貨はドルであり、また世界経済活動の大半の部分はドルそのものとドル資産に依存しています。
一般的にドル安になればその資産価値は減り、投機マネーはヘッジ先として他の通貨や資産を探すことになります。そのため、ドルと逆の値動きをする金はリスクヘッジとして非常に好まれるのです。
柔軟性(国に依存しない)
投資テクニックやスキルとは少し違う視点になりますが、
資産を守るため、自分らしい生き方を実現するために、どこが一番適した場所であるかと考えたことはありますか?「日本で生まれたから、日本で生活する。」そう考えるのではなく、自分の資産・目的・価値観にあった場所を選択しているのが富裕層です。各国の雇用者報酬の推移を以下に示します。
日本は過去20年間で雇用者報酬は横ばいですが、他国をみると軒並み上昇していることがわかります。
同じ仕事をしてても国によって労働賃金に差が出ることがわかります。自国だけでなく、他国でも働ける知識と力を身につけることで、国というリスクから回避することができます。富裕層が海外永住やリタイア後に海外に住む理由は、贈与税、相続税、キャピタルゲイン課税、インカムゲイン課税などの資産を守るという点に加え、教育、健康、国際感覚という自分の人生を豊かにするための選択をしているという側面もあるのです。
自己リスクに備える2つの方法。
生活力(経済的な自立)
経済環境、家庭環境に左右されないようしっかりと経済的に自立することは非常に重要です。
ビジネススクール卒業生1,500人を対象とした調査で、「夢を追うのはいつですか?」という質問に対する回答を見てみましょう。
「今すぐ夢を追いかける」と答えた人は17%(250人)
「経済的に安定してから夢を追う」と答えた人は83%(1250人)でした。
しかし、その中で成功した人の内訳をみると、
「今すぐ夢を追いかける」と答えた人は100人(成功率40%)
「経済的に安定してから夢を追う」と答えた人は1人(成功率0.08%)という結果になりました。どんな状況からでも今すぐ行動をするかしないかで、成功する率は490倍の差が出るということになります。
また、フランスの経済学者トマ・ピケティは
資本が資本を生む割合である資本収益率(r)と、労働が収益を生む経済成長率(g)との関係は以下であると示しました。
資本収益率(r) 5% > 経済成長率(g)2%
つまり、経済環境、家庭環境に左右されないようしっかりと経済的に自立することは、自分の資産を守ることにつながると言えます。
学びを深める
資産を守るため、知らないことに手を出さないこと、そして、常に学び続けることが大切です。いつの時代でも詐欺事件で資産を失うケースはよく見受けられます。また、2008年は大きく相場が下落し、分散投資をしていても30%もの資産を失った人もいました。資産を作るのは10年単位だとしても、失うのは一瞬です。他人からの被害を見抜く知恵や、経済の大きな流れを自ら知ることが「資産を失うリスク」を避ける秘訣なのです。
まとめ
それぞれのリスクに対して富裕層が実施していることは上記の6点でした。
ただ、成功している富裕層が一番大切にしていることがあります。それは、どんな時も決して「自分を見失わないこと」です。
W・バフェットは以下のように言っています。
──金持ちになるためには、ふたつのルールを守りなさい──
1、絶対にお金を損しないこと
2、絶対にルール1を忘れないこと
自分を見失わないためには、お金の知性を高めることが一番重要だと思います。