2017年から60歳未満の多くの人がiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できるようになり、2018年からは積立方式で購入した株式投資信託等から得られる分配金、売却益が20年間にわたり非課税となるつみたてNISAも開始。
自主的な老後資金準備を強烈に後押しする制度が次々と導入される背景には、少子高齢化による公的年金制度に対する不安感も。
多くの現役サラリーマンは、給与・賞与から厚生年金保険料が差し引かれていますが、一体いくら年金が増えるのかは分かりにくいですよね。
今回は、サラリーマンが働いた場合にいくら年金が増えるのかを解説します。
なお、内容をわかりやすくするため、「厚生年金保険料を支払う」を「サラリーマンとして働く」と表記します。
※年金額はいずれも平成30年度価額です。
※厚生年金から支給される定額部分、経過的加算、加給年金等の解説は割愛します。
Contents
20歳以上60歳未満は1年働くごとに約2万円弱の老齢基礎年金が増える!
20歳以上60歳未満のサラリーマンが働くと、老齢基礎年金と老齢厚生年金が増えます。
つまり、厚生年金保険料を支払うと、老齢厚生年金だけでなく、国民年金(老齢基礎年金)も増えるんです。
まず、老齢基礎年金は1年働くと65歳以降の年金額(年額)が約1万9,500円増えます。
サラリーマンとして5年働くと、約9万7,500円弱
サラリーマンとして10年働くと、約19万5,000円弱、
サラリ-マンとして40年働くと、約78万円弱の年金がもらえます。
なお、20歳未満のサラリーマン、60歳以上のサラリーマンとして働く期間は、老齢厚生年金(報酬比例部分)には反映されますが、老齢基礎年金は増えません。
給料と働く期間に応じて老齢厚生年金が増える!
会社員は給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)に応じた厚生年金保険料を支払うことで、報酬比例部分の老齢厚生年金が増えます。
今後、働く期間に応ずる年金額は以下のとおり計算します。
平均標準報酬額×5.481/1,000×厚生年金保険の被保険者月数
平均標準報酬額とは標準報酬月額と標準賞与額の総額を基に求めた報酬を加入月数で割った平均額であり、ここでは「年収÷12」と考えることにします。
つまり、1年働いて増える年金は、
平均標準報酬額×5.481/1,000×12 となりますが、
年収÷12=平均標準報酬額とすれば
年収×5.481/1,000
と考えることもできます。
1年働いて増える報酬比例部分の老齢厚生年金(年額)は、年収の約0.55%。
さらに20歳以上60歳未満の期間は約1万9,500円の老齢基礎年金が増えますので、20歳以上60歳未満のサラリーマンが1年働いて増える年金額(年額)は概ね「年収×0.55%+1万9,500円」となります。
例えば、20歳以上60歳未満のサラリーマンとして1年間働いた場合に増える年金額(年額)は
年収300万円の人は、300万円×0.55%+1万9,500円=約3万6,000円
年収480万円の人は、480万円×0.55%+1万9,500円=約4万5,900円
となります。
なお、20歳未満、60歳以降70歳未満のサラリーマン期間は、老齢基礎年金の年金額には反映されませんので、1年働いて増える年金額(年額)は「年収×0.55%」となります。
ねんきん定期便で過去をチェック。計算式で今後の年金を加算。
計算式で求めた年金額が5年働けば5倍、10年働けば10倍、20年働けば20倍となりますが、今後、働かないとなれば、その分の年金額は増えないことになります。
働くことも老後資金を作る1つの方法ということがわかります。
毎年誕生月に送られる「ねんきん定期便」では過去の年金額を確認できます。今後の年金額は「今後の収入予測と働く期間」に基づいて試算できます。
合計するとより具体的に年金額がイメージできますね。
ただし、その年金額は決して十分ではないでしょう。
さらに、国の年金制度の年金額は増えにくい制度に変わりましたので、老後資金準備はより一層の自助努力が必要です。
まずは、働いた結果として年金がどの程度増えるかを試算し、不足する部分をiDeCoやNISA、国民年金基金、小規模企業共済等、利用できる制度を活用して準備に取り組んでください。
この記事のライター
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益山真一
ファイナンシャルアカデミー認定講師。「お金の教養スクール」で教壇にたつ。家計改善を得意とするファイナンシャルプランナー。國學院大學経済学部の非常勤講師も勤め、研修・セミナーの実績も多数。経済、景気等への感度が高く、株式投資では18ヶ月連続増益の経験もある。