投資に不可欠な、業績の把握・分析。財務会計の知識が求められるため、不慣れな投資家にとっては難解に感じる部分もあると思います。今回は売上高や営業利益といった損益計算書のポイントを解説し、四季報を使った足元の業績の便利な調べ方も紹介します。
【受講生の質問】
足元のというのは今進行中のという意味で、2021年3月期のことでしょうか? 今は2020年ですが(2020/4月~2021/3月〆)〆年を使うということでよいでしょうか。四季報を読んでいて、今期と来期がどこを指すのかわからなくなってしまいました。
Contents
四季報の「足元」とは「今期」のこと
足元というのは、今期=現在進行中の、ということです。 例えば、いま(2020年8月)を基準に考えた場合 3月決算の企業は次のようになります。
・前期 2019年4月〜2020年3月
・今期 2020年4月〜2021年3月(いま(2020年8月を含む期が「今期=足元」)
・来季 2021年4月〜2022年3月
決算とは?
決算とは、四半期末・会計年度末時点の財務状態と、四半期間・年度間の経営成績を計算して明らかにする活動です。個人の活動にたとえるならば、3カ月ごとに貯金額や借金の残額を確認したり、収入と支出がいくらあったのかを計算したりするといったものになります。企業は決算を通じて財務諸表、具体的には「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」を作成します。
上場企業の場合、四半期・会計年度が終了してから45日以内にその決算を公表しなければなりません。日本は3月末を会計年度末としている企業が多いので、5月、8月、11月、2月のそれぞれ中旬が決算発表の盛んなシーズンとなります。
四季報では各企業の財務諸表の簡易版が掲載されていますので、気になる銘柄の決算の要点を素早く把握したい時に非常に便利です。
ちなみに、四半期ごとの決算を「四半期決算」、会計年度末ごとの決算を「本決算」といいます。
今期とは?
今期とは、「現在進行中の期」ということです。その際に重要なのは、会計年度末日を確認することです。多くの企業は3月末を会計年度末としていますが、なかには2月や8月、12月の末日を会計年度末としている企業もあるので、今期の業績などについて考える際、まずはその企業の会計年度末日を知ることが重要です。
来期という場合は「現在進行中の期の次の期」を指します。例えばいま(2020年2月)を基準に考えた場合、3月決算の企業の今期・来期は以下になります。
・今期 2019年4月~2020年3月 = 2020年3月期
・来期 2020年4月~2021年3月 = 2021年3月期
四季報で会計年度末を確認したい時は、大きく記載された銘柄名のすぐ下にある【決算】という箇所を見てみましょう。そこには「3月」や「8月」などと書かれています。その月の末日が、その企業の会計年度末日ということになります。
四季報の「足元」どこを見るのか?
足元でチェックすべき3つのポイントを紹介していきます。
チェックポイント1:業界の状況
四季報では、各銘柄は証券コード順に掲載されています。証券コードは業種ごとに区別されて付けられるので、つまり業種ごとに銘柄が載っていてチェックしやすいということになります。銘柄の業績の概要説明の中で、
・消費者の購買意欲の低迷で~
・市場でのIT投資の拡大で~
・東京五輪を背景とした旺盛な建設需要を受けて~
といったように業界全体に関する記述を見つけたら、それはその業界の動向を把握するヒントになります。
チェックポイント2:財務状況
企業の財務状況をチェックすることも大切です。自己資本比率や有利子負債の水準などをもとに財務の安全性を測ったり、ROAやROEをもとに資本の効率性を測ったりすることで、業界の中でも銘柄ごとの優劣が見えてきます。
チェックポイント3:一株益
投資家にとって一株益も重要な指標です。一株益とは純利益を発行済株式総数で割ったもので、一言でいえば「その期に会社が稼いだ利益のうち、1株分に相当するもの」です。
「純利益が伸びていればそれでいいのでは?」と思う方もいらっしゃると思います。しかし、会社は資金調達の際に新株式を発行したりするので、発行済株式総数は増減します。新株式を発行したものの、調達した資金を効率的に運用できなかった場合は「純利益が伸びても、一株益は減少する」といったことが起こるので、やはり一株益のチェックも重要です。
「足元」から比較し前期からの成長度と今後の業績を予想する
足元である今期を中心に、前期・来期について比較し、成長度から今後の予想を立てていきます。ちなみに、前述したように「今期」は会計年度末日を過ぎると対象となる期が変わります。
比較するポイント1:売上高
何はともあれ売上高の期間比較は非常に重要です。商売が順調なのか、停滞しているのか、縮小しているのかを端的に把握することができるからです。また、同じ業界の他の銘柄の伸びと比較することで
・伸びてはいるけど他社ほど伸びておらず、競争に負けている
・他社の多くが減少する中で横ばいを維持しており、業界内での強さがある
といったこともわかります。
比較するポイント2:営業利益
「本業による利益」ともいわれる営業利益も重要です。売上高が伸びたとしても、費用がそれ以上に増えてしまい、利益が減ってしまっては意味がありません。最近では、人手不足による人件費の高騰やそれに対応した業務効率化によるコストカットなど、費用面への注目度も一層高まりつつあります。
また、売上高と組み合わせ、「売上高営業利益率」に目を向けることも大変有効です。売上高が伸び、さらにコストカットなどがうまくいくことで営業利益率も上昇するような企業は増益幅が非常に大きくなるので、投資家目線での評価が非常に高まります。
比較するポイント3:経常利益
経常利益については、多少解釈が難しい面があります。営業利益を「本業による利益」というなれば、経常利益は「資金調達や金融投資といった財務的活動や副業も含めた利益」といえるでしょう。経常利益は、基本的には営業利益に受取利息・配当金や持分法投資損益といった債券・株式投資から発生する利益を足し、支払利息といった借入金や社債にかかる費用を差し引くことで計算されます。
企業の中には営業利益ではなく経常利益を「本業による利益」とみるべきものもあります。不動産販売業など、負債の調達を大前提としたようなビジネスモデルの場合は、支払利息の水準も重要となるので、経常利益を見ることが重要となります。また、総合商社など多くの企業に小口投資している銘柄の場合も、受取配当金が多額となり、営業利益との差が大きくなるので、やはり経常利益を見ることが大切となってきます。
比較するポイント4:純利益
損益計算書の最下段にある純利益は「ボトムライン」とも呼ばれ、最終結果を表す数値として重要です。工場火災や訴訟による賠償金の支払いといった一時的な損失や、法人税の調整といった会計の難解な処理の影響などを受けるので、純利益の増減を理解するのは難しいケースもあります。そのうえでひとまずの目安としては、経常利益のおおむね7割程度の水準であれば、そこまで注意深く見る必要はないでしょう。
ただ、7割を大きく下回る水準の際には「減損損失」「事業構造改革費」という項目に注意したいところです。これらは四季報では省略されているので、実際の決算を見てみないとわからないです。減損損失とは、平たくいえば「ある資産の将来の収益性が一定を下回ると判断された時に計上される損失」であり、事業の見通しが悪化している可能性があるので、今後の業績を占う指標として警戒が必要です。事業構造改革費については文字通り、事業に大きくテコ入れすることによる費用であり、基本的には一時的なものです。しかし、ビジネスがうまくいっていない企業の場合は高頻度で計上するケースもあり、その場合は事業構造改革費はもはや「一時的」ではなく、継続的な出費として営業利益から差し引くなど、見方を変えることも大切となってきます。
足元の業績がよい=値上がりする銘柄?
これまで足元の業績の見方について解説してきました。では、足元の業績がよい銘柄が、値上がりする銘柄なのでしょうか?以下で、値上がりする銘柄の条件をご紹介します。
値上がりする銘柄の条件
今期の会社予想と本決算での実績を比較し、「株式市場に対する約束を守れたか」「株式市場の予想に達したか」という点を確認することは投資家として大事ですが、やはり重要なのは来期の業績が上向きか下向きかを見ることでしょう。株価は基本的に、未来の見通しをもとに上下します。そのため、値上がりする銘柄を見つけるには未来の業績に目を向けることが求められます。いくら前期の実績が好調な着地となっても、来期以降、売上高や利益が減少していく見通しの銘柄に買いは向かいづらいです。
まとめ
以上、決算の説明からスタートして、四季報を使った各財務指標のポイントを解説してきました。こういった知識をうまく使うためには、頭で理解するよりも「慣れ・感覚」を意識することが重要なので、何回も繰り返し四季報を見て身につける必要があります。
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