「カイケイ」と聞いても、ほとんどの方にはなじみがないと思います。
そんな方のために、まず「身近な会計のハナシ」から始めて、会計 の考え方に触れていきます。
最初に、身につけたい会計の考え方が、『純額(じゅんがく)』です。
Contents
会計は私たちの生活の中にある
「会計」は会社の活動はもちろん、私たちの生活にも密接しています。
世の中の情報を、「会計」を通して見ることで、より深く、より効果的に活用することができます。そして、その情報を自分の未来につなげることができます。
今、世の中は、インターネットの普及によって、ぼう大な量の情報が簡単に手に入るようになりました。また、その数は年々増加していく一方です。ただし、この増加した情報が全て真実とは限りません。と同時に、本当に必要な情報は、増加する情報の中でどんどん埋もれていってしまいます。そんな情報の中から、真実の情報を探し、自分にとって必要なものを入手するためには、「会計」が役に立ちます。そして、これを活用して未来へつなげていく。これこそが「会計」を学ぶ目的です。
あなたはどんな未来像を持っていますか?
人はそれぞれ、さまざまな未来像を持っていると思います。その違った未来像であっても、必ず共通して必要なものは「お金」です。
それでは、その「お金」をどのように増やしていくか?
「収入」を上げて、お金を増やす。
「支出」を下げて、お金を増やす。
「資産運用」をして、お金を増やす。
お金の増やし方も、さまざま…、人それぞれです。
そして、これに共通して必要なものが「会計知識」です。
ただし、「会計知識」を持っていても、それを「活用」できなければ、お金を増やすことはできません。
この講義では「会計知識」を学びながら、「どのように、その知識を『活用』するか?」を考えていきます。そして、それを是非、みなさんの未来像の形成へと役立てていただきたいと思います。
「どちらがお金持ちでしょうか?」
問題
Aさんは、4000万円の家を持っています。
Bさんは、1億円の家を持っています。
AさんとBさん、どちらがお金持ちでしょうか?
「いくらの家を持っているか?」ということだけで判断をすると、Bさんの方がお金持ちということになります。しかし、これだけの情報で判断するのは危険です。なぜなら、お金を借りている可能性があるからです。
例えば、Aさんが全て現金で家を買っていたとします。
そして、Bさんは9000万円の住宅ローンを借りて家を買っていたとします。
【ワンポイント】
「資産」とはお金に変わるもの、「負債」とはお金を払う約束、「資産」-「負債」が純資産です。
解答
上の問題の解答は、
Aさんの純資産*は( 4000万円 )、Bさんの純資産は( 1000万円 )、
ということになります。
【用語解説】純資産
お金に変わる「資産」から、お金を取られる「負債」を差し引いた、「純額の資産」のことです。
差し引くべきものを差し引く『純額』という考え方
このように、私たちは常日ごろ、ある「数字」を見ると、その数字を鵜呑みにしてしまいがちです。
こういうときに大切なのは、まず「差し引くべきものはないか」という疑問を自分に問いかけることです。見かけの資産だけで、資産家であるのかを判断することは危ういことに気づけるハズです。
例えば、9000万円の借金をして1億円の家を買ったBさんの場合、毎月借金を返済することで、その借金は減っていきますが、それ以上に、家の価値が下がることもあり得ます。
もしBさんが、5年間で借金を1000万円返済したとします。その段階で、家の価値はどのくらいでしょうか? もちろん、土地の価格の上昇などで、価値が上がっていることもあり得ますが、下がることもあります。そして、その下がり具合によっては、家の価値より借金の残高の方が高くなってしまう場合もあるのです。
そして、Bさんは9000万円の住宅ローンを借りて家を買っていたとします。
『純額』を使って身近なものを考える
先の例のように「お金持ちかどうか」を判断するには、見せかけの「総資産*を増やす」のではなく、差し引くべきものを差し引いた純額の「純資産を増やす」ことこそが、大切だということが分かります。
【用語解説】総資産
貸借対照表の資産の部の合計のことです。
借金を差し引いた純資産ではなく、差し引く前の総額の資産だから「総資産」と言います。
ここでもう1つ例を出しましょう。
「年商3億円の社長」と聞いて、みなさんはどんなことを思い浮かべますか?
「3億円」というと宝くじで当たるような金額ですから、相当大きな金額です。だから、「年商3億円の社長」という言葉を聞けば、お金持ち・豪邸・富裕層という言葉を思い浮かべるかもしれません。
しかし、この「年商3億円」から差し引くべきものは、ないのでしょうか?
「年商」とは、すなわち「売上」のことです。
例えば、パン屋さんは100円のパンを売ったら、その100円がそのまま自分の儲けになるわけではありません。
100円のパンを作るために、さまざまな材料・従業員のお給料・電気代・水道光熱費などがいるわけです。そういったものを「差し引かないと」本当の儲けは分からないわけです。
「年商3億円の社長」にしても話は同じです。
ちゃんと差し引くべきものを差し引いてからでないと、本当にお金持ちかどうかは分からないのです。
会計で数字を「見る」から「読む」へチェンジしよう
見た数字を鵜呑みにしない方法は、「純額」だけではありません。
会計の世界でも欠かせない考え方の1つが、『比率』です。
「比率」という考え方
会計の数値を見たときや、日ごろ何かの数字を見たときに、「大きい」「小さい」「良い」「悪い」といった結果の数字だけを見るのではなく、「なぜ?」「それは○○○○ということだ」という理由や意味を考え、その数値や数字の背景を読み解くようにしましょう。今回のテーマ「比率」もその1つです。
今、世の中は情報化社会です。情報にあふれています。そしてまた、その情報が必ずしも正しいものであるとは限りません。そんな世の中に必要なものは、情報を見極める力です。それではこの見極める力はどうしたら身につけることができるのでしょうか?
それを身につけるサポートをしてくれるのが、「会計」の考え方です。
「会計」というのは、とかく経営者や専門家(例えば会計士、税理士、経理担当等)が学ぶもののように思われがちですが、そうではない方々にとっても、必要な知識です。なぜなら、私たちの生活には、お金や数字が密接にかかわってくるからです。
「会計」を学ぶことによって、世の中のお金の流れや、数字の本当の意味が分かるようになり、そして、未来の人生設計ができるようになります。
例えば、「株取引」についての女性同士の話をご紹介します。
A子さんが、友人のB子さんに彼氏の自慢話をはじめました。
A子さん:私の彼って~、すごいんだよ! 株で100万円儲けたんだ~!
B子さん:へえ~!すごいね。100万円も??? 超すご~い
これは、会計を知らないB子さんの反応です。
もしB子さんが、会計の知識を持っていた場合、どのような会話になるでしょうか?
A子さん:私の彼って~、すごいんだよ! 株で100万円儲けたんだ~!
B子さん:へえ~!すごいね。100万円も??? ところで、いくらの元手で100万円儲けることができたの?
この「いくらの元手で…」という、質問が重要になります。
「どちらが優れた投資家でしょうか?」~①利益が同じケース
問題
Aさんは株で1年間100万円儲けました。使った元手は500万円です。
Bさんも株で1年間100万円儲けました。使った元手は1000万円です。
さて、AさんとBさん、どちらが優れた投資家でしょうか?
①利益が同じケース
利回りは、「投資の効率の良さ」を表します。高ければ高いほど「投資の効率が良い」ことになります。優れた投資家はAさん、ということになりますね。
「どちらが優れた投資家でしょうか?」~②利益が違うケース
問題
Aさんは株で1年間100万円儲けました。使った元手は200万円です。
Bさんも株で1年間1000万円儲けました。使った元手は1億円です。
さて、AさんとBさん、どちらが優れた投資家でしょうか?
②利益が違うケース
利回りが示すのはあくまで投資の「効率の良さ」です。そういう意味では、優れた投資家はBさん、ということになりますね。必ず投資全体の優劣が判断できるものではない点に注意が必要です。
これが「会計」の大切な考え方である「比率」です。この比率を学ぶことで、数字を「見る」から「読む」へシフトできるようになります。
比率によって「ビジネスの効率」が分かる
ここではもう1つ比率を使った考え方を押さえておきましょう。
先ほどの「年商3億円の社長」の例を思い出してください。年商3億円と一言で言っても、そこから差し引くべきものを差し引かないとダメだ、という話をしました。それでは下のように、同じ「年商3億円の社長」が2人いたと考えてください。
Aさんは弁護士でした。弁護士の場合、何か売上が上がったとしても、何か目に見えるものを売ったわけではありませんから、何も仕入れる必要はなく、いわゆる売上原価はゼロでした。
一方のBさんはパン屋さんでした。Bさんは素材にこだわる人だったので、高い小麦や卵を使い、そのためにかかったお金・売上原価はなんと2億円でした。
そしてAさん、Bさんお互いが人件費を差し引くと、手元に残るのが2億円と5000万円でした。この2人のビジネスはどちらが効率がよいのでしょうか? 比率を出して考えてみましょう。
いかがだったでしょうか?
同じ売上の会社があっても、それを「純額」で考え、さらにその「比率」を見ることでビジネスの本質が見えることになります。「純額」に引き続き、この「比率」という考え方も、是非押さえておいてください。
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