ヘッジファンドに投資すれば儲かる?
<質問> ニュースでよく「ヘッジファンド」という言葉を聞くのですが、どのようなものですか?また、ヘッジファンドに投資すれば儲かるのでしょうか?
<回答> まずはヘッジファンドの仕組みからみていきたいと思いますが、その前に、一般的なファンドを理解することから始めましょう。
▶︎ファンドとは
多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ基金にして、収益を還元する仕組みのことです。(正確には異なりますが)「ファンド」と「投資信託」はほぼ同じ意味で使われることが多く、投資信託協会のWEBでも同じ意味(英語ではファンド、日本語では投資信託)で使われています。
その一般的なファンド(≒投資信託)は、「公募」といって、誰もが投資(購入)できるようになっています。
しかし、ヘッジファンドは異なります。多くのヘッジファンドは「私募」により、限られた投資家(機関投資家や富裕層など)が投資して運用します。
つまり、誰もが投資できるファンド(≒投資信託)に対して、限られた投資家でないと投資できないのがヘッジファンドなのです。
そして一般的なファンドは、1万円程度から投資できるものが多いですが、ヘッジファンドは最低投資額が1,000万円〜1億円以上のものが多く、投資額からみても限られた投資家でないと投資できないようになっているのです。
では、ヘッジファンドに投資すれば確実に儲かるのでしょうか?
そんなことはありません。
▶︎ファンド(≒投資信託)は「相対収益」、ヘッジファンドは「絶対収益」
一般的なファンドの運用目標は、「ベンチマーク」を上回ることです。ベンチマークとは、ファンドが運用の指標として用いる基準で、日本株に投資するファンドであれば、日経平均株価やTOPIXなどがベンチマークとなります。つまり、日経平均株価が下がっている局面で、ファンドの運用成績がマイナスになっても、日経平均株価というベンチマークを上回っていれば評価されるのです。このように運用成績をベンチマークと比較することを「相対収益」といいます。
一方、ヘッジファンドは、ベンチマークなどは関係ありません。相場(日経平均株価等)が上がっても下がっても、プラスの利益を目指し、これを「絶対収益」の運用といいます。絶対収益とは、必ず利益を上げるという意味ではなく、ベンチマークなどの比較対象がない状態で、どんな相場環境でも利益を上げる(目指す)という意味です。
その利益を上げるために、ヘッジファンドは様々な手法を使います。ファンドは主に株や債券などの伝統的資産にしか投資しませんが、ヘッジファンドはそれ以外にも、先物やオプションなどのデリバティブに投資したり、空売りを活用して下がっても利益が上がるような手法をとるのです。
その結果、利益が出やすい構造にはなっていますが、確実に儲かるというわけではないのです。
なおヘッジファンドは、利益が出せないとすぐに消えていきます。利益が出ないと、投資家(機関投資家や富裕層など)は他のヘッジファンドに資金を移していくからです。ファンドを購入するような一般的な個人投資家よりも、利益に関して厳しく見る傾向がありますので、利益が出せないヘッジファンドは消えてなくなっていくのです。
▶︎魅力的に見えるヘッジファンド投資:3つのハードル
1つ目は、最低投資額の高さです。
先程も説明しましたが、1,000万円〜1億円以上からしか投資できません。ある程度まとまった資金がないと、そもそもヘッジファンドに投資することが難しいのです。
2つ目は、分かりづらさです。
金融機関の窓口などで見かける投資信託のパンフレットは、素人にも理解できるように(といっても多少知識がないと分かりづらいですが)丁寧に説明されています。
しかし、ヘッジファンドにはそのような丁寧なパンフレットは存在しません。ヘッジファンドに投資するのが機関投資家や富裕層などの投資上級者なので、法に定められた最低限の情報しか提供されていないことが多く、そのヘッジファンドが良いのか悪いのかが、分かりづらいのです。そのような情報をしっかり見極める目を持たない限り、ヘッジファンドへの投資は危険なものとなります。
3つ目は、コストです。
一般的なファンドよりもコストが高いことが多いヘッジファンド。購入時手数料や信託報酬は当然のことながら、利益に対する成功報酬もあります。どのようなコストがかかるのかをしっかりと把握できるようになった上でヘッジファンドに投資をしないと、資産が増えないということもあるのです。
このように、ヘッジファンドにはメリットもたくさんありますが、ハードルもあります。
ヘッジファンドに投資をして大きな利益を得ている投資家がいるのも事実ですが、ヘッジファンドに投資ができるようになるための知識を身につけていかないと、利益を上げることは難しいのです。そして、消えてなくなっていくようなヘッジファンドに投資をしてしまうと、大きな損失を被ることもありますので、注意が必要なのです。