子ども向けの金融経済教育の現状。
遡ること12年前の2008年。「金融学習協会」というファイナンシャルアカデミー内の1部門として、子ども向けの金融経済教育プロジェクトはスタートしました。
当時、子どもの金融経済教育といえば、お小遣い帳をつけることくらいしかありませんでした。子ども向けのお小遣い帳が売られていたりしましたが、もっとお金の本質を教育プログラムとして伝えられるものが必要だ、と思ってオリジナルのプログラム開発を行いました。
その中には、ボードゲームやカードゲーム、そして紙芝居などたくさんの教育プログラムをつくり、延べ5,000人を超える子どもたちにお金の教育を行ってきたのです。
その中の1つが「お金の教養講座 for STUDENT」です。
品川女子学院高等部で毎年行っている、中高生向けの金融経済教育カリキュラムです。
品川女子学院は、国内4,800程の高等学校の中から、文部科学省が国際的に活躍できる人材育成を重点的に行う高校として50校程を指定した「スーパー・グローバル・ハイスクール」に選べる程、社会に出て真に役に立つ人材育成を本気で行っている素晴らしい学校です。
今から7年前、特別授業として高校2年生に対して、放課後にお金の教養講座 for STUDENTを開催。生徒からも先生方からも素晴らしい授業だった!という反響の良さに、翌年から家庭科の本授業として採用されることになり、毎年行っています。
ファイナンシャルアカデミーの講師が毎年、教えに行っているのですが、女子高生に直接教えることができる!とテンションの上がる講師(笑)や、逆にドキドキする講師もいるくらい、ファイナンシャルアカデミー内では楽しいイベントの一つになっています。
そして今年も、高校2年の全5クラス、合計200名超の生徒に対して授業を行ってきました。
授業の内容は「価値と価格」です。
消費者として価格(=値段)だけに左右されて間違った判断をしないよう、人生最大の買い物と言われているマイホームを事例に、授業を進めていきます。住宅ローンや、リセールバリューなどの基本的知識を伝えた上で、実際に「自分で住みたい家」をネット検索してもらい、その物件を買うための借入額を調べ、そしてその借入をするために必要な年収を計算し、その年収が得られる職業まで割り出していく、というワークショップ型授業なのです。
これは、毎回大盛りあがり(笑)です。
田舎で500万円位の一軒家を選ぶ生徒から、3億円を超える億ションを選ぶ生徒まで、(予算からではなく)純粋に住みたい家を選んでいる姿を目にすると、大人も学ぶところがあるな、と思えるくらいです。
そして50分の授業2コマが終わり、すべての生徒から感想を書いてもらいます。
その時のコメントがあまりにも素晴らしく、嬉しい感想をたくさんいただけるので、更に講師のテンションが上っていくのです!
このように、子ども向けの金融経済教育は広がってはきていますが、実は収益化はできておらず(しておらず)、ボランティア活動の一貫として行っています。
問題点をあえて上げるとすれば、子ども向け経済金融教育は収益化が難しい、ということです。
金融経済教育の良さを理解している大人は「子ども向けの金融経済教育は必要だ」となるわけですが、、、大人でも経済金融教育を受けた人はほんの僅か。教育関係者に関しては更に少ない比率となっています。そんな金融経済教育を知らない大人が、子どもたちのために経済金融教育の導入を行うことはハードルが高く、さらに有料となるとその予算もでないわけです。学校の予算はほとんどありませんし、家庭の予算からも(塾代はなんとか捻出できますが)出しづらいという現状があります。
2022年4月から始まる高校の学習指導要領に資産形成の項目が加わります。10年以上前から私が「ズボンの膝に穴があいたら裁縫して直す時代ではなく、お金を払って新しいズボンを買いに行く時代なので、お金の扱い方を学ぶことは家庭科の重要な一つになる。」と考え、教育関係者の方にお伝えしていたものが、やっと授業に加わることになったのです。
コロナの影響もあり経済が大きく変化する今。大人がお金について学ぶ必要のある人が増えていくのは間違いありません。今は大人(社会人)向け経済金融教育を広げることで、金融経済教育の重要さを理解する教育関係者が増え、その結果、子ども向け金融経済教育も広がっていくことでしょう。