中村亨のビジネスEYE

新型コロナも対象に-災害損失欠損金の繰戻し還付制度

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中村亨の「ビジネスEYE」です。

内閣府による中小企業への意識調査(2021年5月13日発表)によると、昨年経営が悪化したとする企業は7割、採算が赤字になった企業は5割にも上っており、新型コロナウイルスの厳しい影響が浮き彫りになっています。

このような状況から国税庁は、以前からある『災害時の特例制度』を適用できるものとして、法人税等の還付を行えるよう「新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」を公表しました。

今回は、新型コロナウイルスの影響による損失も対象となる「災害損失欠損金の繰戻し還付制度」についてご説明します。

「青色欠損金の繰戻し還付制度」とは

青色申告法人でその事業年度に欠損金が生じた場合には、その法人が還付請求を行うことで、その事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税等の還付を受けることができる「青色欠損金の繰戻し還付制度」があります。
簡単に申し上げますと、当期が赤字、前期が黒字の場合に、当期の赤字を前期の黒字と相殺して税金の還付を受ける制度です。

この制度は青色申告法人で中小企業者等(原則として期末資本金が1億円以下となる法人)が適用を受けることができましたが、新型コロナウイルスの影響により令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度において生じた青色欠損金については、中小企業者に限らず、期末資本金の額が1億円超10億円以下の一定の法人についても拡大して適用を受けることができることになっています。

「災害損失欠損金の繰戻し制度」とは

災害のあった事業年度またはその事業年度の中間申告時において災害損失欠損金が生じたときに、その事業年度の前1年以内(青色申告法人は前2年以内)に開始した事業年度の法人税のうち、災害損失欠損金に対応する部分に関して還付を受けることができる制度です。
簡単に申し上げますと、当期が赤字、前々期が黒字の場合に、当期の赤字のうち災害に係る金額を前々期の黒字と相殺して税金の還付を受ける制度です。

こちらは青色、白色に関係なく、さらに期末資本金の額の制限もないため、すべての法人が対象となります。
青色申告法人については災害損失欠損金について前々期の黒字とも相殺が可能です。

注意が必要なのは、災害損失欠損金の繰戻し制度の還付対象は、青色欠損金の繰戻し還付と同様、国税部分のみ(法人税・地方法人税)ですので、地方税は対象とならない点です。

以下のURLでは、災害損失欠損金の繰戻し還付制度について
・災害損失欠損金の範囲
・該当する例/該当しない例
・留意すべき点
など更に深く解説を行っています。併せてご参考ください。

●〇● 【税務トピックス】新型コロナウイルスの影響による災害損失欠損金の繰戻し還付制度について
┗ https://j-creas.com/tax-topix/6810/

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。