中村亨のビジネスEYE

法人向け節税保険の規制案

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世間を騒がせている法人向け節税保険(法人定期保険、経営者保険)の規制案について、4月11日国税庁よりパブリックコメントが発表されました。
騒動の発端は解約返戻率の高い、全額損金参入タイプの保険販売が過熱したからと推察されます。

資産性の高いものは資産計上、そうでないものは損金扱いをするという、基本的なルールを逸脱したため、今回の経緯に至ったのではないでしょうか。

また、今回の規制案には、過去に契約をした保険に関する遡及対応についても書かれています。

今回の【ビジネスEYE】では、法人向け節税保険の規制案を見ていきましょう。

今回のパブリックコメントでは、下記の保険商品について、今後の損金算入割合がリリースされました。
※まだ正式決定ではありませんので、内容が変更される可能性があります。

契約者:法人
被保険者:役員・従業員
受取人:法人
・保険商品(定期保険・医療・ガン等)
・保険料は全額or半額を損金算入できる。
・解約返戻金が高い

1.損金算入割合の変更

解約返戻金の最高返戻率を基準に損金算入額が4つに区分されます。

50%以下   100%損金算入
70%以下    60%損金算入
85%以下    40%損金算入
85%超  10~30%損金算入

今回の規制案は損金算入割合が、期間や最高返戻率によって違うなど
ルールが複雑になっています。

従来の定期保険で解約返戻率が80%の商品を例に比較してみましょう。

改正前:支払い保険料に対して 100% 損金
改正案:支払い保険料に対して   40% 損金

比較の通り損金割合の差が60%の結果となりました。
今後、経費計上しながら、保険で資金対策するのは難しくなりそうです。

2.過去に加入した契約に関して遡及はしない

既契約分の取り扱いについては、国税庁が発表した適用時期について「改正通達の発遣日」からと記載されています。
よって過去の契約に遡らず、通達日以降から適用となります。
※現状ではあくまでも案の段階です。近日中に通達が発表されます。

では、今後の各保険会社の動向予想と、既契約見直しのポイントをお伝えします。

◆今後保険会社はどのような商品を開発してくるのか

まだ情報は流動的ですが、今回の規制を考慮すると、下記のような商品開発をしてくると考えられます。
・解約返戻金とは別の配当を還元する商品(解約返戻金とは別で配当金を還元)
・外貨商品にシフトする(米国債券・海外社債など高利回り運用の商品が増える)
・保障重視の商品が増える(三大疾病に手厚い法人保険など)

◆現在法人保険契約に加入している法人は注意が必要!

現在ご加入している保険の中には、希少性の高いものが数多くあり、今後同じ商品に加入する事ができないため、新しい保険に加入する場合には、現在の保険を分析してから新しい商品への加入を検討された方がよろしいかと思います。

最後に、今年の2月13日以降、各保険会社は法人保険の販売停止をしていますが、一部の共済組合では、法人を契約者とした類似の共済保険を販売しています。
解約返戻金も良く、全額損金算入できる保険のため、今回の改正前にご検討してもいいかもしれません。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。