中村亨のビジネスEYE

平成の関西、令和の関西

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新元号を迎えて10日近く経とうとする中、「令和」の出典元である万葉集ゆかりの地・奈良で「聖地巡礼ブーム到来か」というニュースが注目されていました。

令和だけでなく、半世紀ぶりの大阪・関西万博の2025年開催が決定し、関西の産業や文化をアピールする場=商機として期待されています。

オリンピック招致は叶わず、残念な面もありますが、今年6月には日本で初のG20サミット(G7とEU、新興国11か国、ロシアの首脳会合)や、ラグビーワールドカップなど、大きなイベントが目白押しの関西。

今回のビジネスEYEでは、「平成の関西、令和の関西」と題して、関西経済のこれからをまとめてみましょう。
(参考:日本経済新聞/2019年4月25日)

(1)関西経済の特徴

関西は、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県の7県から成り、経済規模は、日本のGDP(国内総生産)の2割を占めています。名目GDPでは、世界18位のオランダに次ぐ位置にあるので、先進国にも匹敵すると言っていいでしょう。

大阪が「天下の台所」と呼ばれ、関西全体で「商人の町」といった印象も強いですが、50年以上も前から水素エネルギーに着目し、全国シェアを握っているなど、次世代エネルギー産業を牽引するという意外な一面も持っています。燃料電池車への供給拠点となる水素ステーションの整備や、神戸港に世界初の水素輸入基地を実験的に新設する計画が進行しています。世界を視野に入れた実用化を進めており、まさに「エネルギー革命」を起こす前夜といった力の入れ方です。関西経済の新たな一手として、底上げを期待する声も多いようです。

(2)平成から令和へ

ビジネスEYE Vol.419でも触れましたが、平成が「失われた30年」だとすると、関西においてその傷跡はより深刻なものでした。
域内総生産は、1970年代から低下傾向にあり、平成に入っても反転することはありませんでした。阪神・淡路大震災によるインフラへの甚大な被害や、バブル期の不動産価格の上昇と下落が東京圏のペースよりも大きかったことも原因のひとつと言われています。

中部地方が自動車産業で国際競争力を維持してきた一方で、関西は主力産業の電機が厳しい経営環境に置かれていたなどの影響も無視できません。

「令和の次の30年に期待することは」というリサーチ結果が平成の終わりに公表されましたが、16~79歳の1万人のうち半数が「特にない」と回答したそうです。新しい時代を非常にドライに受け止めていることが窺えます。

また、平成で印象に残っている出来事については、4割の人が「災害」と回答していました。
阪神・淡路大震災や東日本大震災、豪雨被害など大規模な災害が続いたため、当然の結果かもしれません。

冷ややかな新時代のスタートではありますが、インバウンド(訪日外国人)需要の拡大や、前述の万博を機に復活の兆しが見えていることが、関西経済の強みではないでしょうか。関西国際空港の閉鎖という苦い経験を活かして災害に強いインフラを整備し、持続的な成長に向けて加速していけるかどうかがカギです。

人口減少による人手不足解消のため、水素エネルギーを使った設備・什器の活用範囲拡大など、明るい材料もありそうです。

東京一極集中を是正する観点からも重要視される関西経済の復活。
万博景気を期待するにはまだ早すぎますが、関西(大阪)出身の作家・故堺屋太一氏の言葉を借りれば「変化の胎動」はもうすぐそこまで来ているのかもしれません。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。