中村亨のビジネスEYE

相続において注意すべき点

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生き方の選択肢が増えている現代、結婚していても子どもを持たない夫婦も 増えてきているようです。
ただし、相続においては、注意すべき点もあるようです。

今回のビジネスEYEでは、下記の2点についてご紹介いたします。
(1)子どもがいない夫婦の相続の盲点
(2)「財産を渡したい人に渡す」ために遺言書を活用

  

(1)子供がいない夫婦の相続の盲点

兄弟姉妹の中に、子どもがいない人がいる場合、その兄弟姉妹が死亡したときの相続には注意が必要かもしれません。

というのも、子どもがいない夫婦の場合、最終的に財産が姻族(いんぞく)のものになってしまう可能性があるためです。

ここで耳慣れない言葉である、「姻族(いんぞく)」について簡単にご紹介いたします。
姻族とは、一方の配偶者と、他方の配偶者の血族との間の関係のことをいいます。 例えば、妻から見たと夫の父母・祖父母、又は、夫から見たと妻の父母や祖父母も姻族となります。

例えば、田中さん老夫婦に長男と次男がいたとします。
長男は結婚をしていますが、子どもはいません。一方、次男は結婚していて子どもがいます。

 
【田中家】
長男夫婦/子どもなし、次男夫婦/子どもあり
 

そのとき、実家や祭祀財産など、大切な財産を長男が相続したとします。 しかし、長男が死亡した場合、相続する権利の多くを、長男の妻が持つことになるのです。

仮に、その実家の土地といった大切な財産を 長男の妻が相続して、妻が亡くなってしまったらどうなるでしょうか。

長男夫婦には子どもがいませんから、その相続権は妻の両親や妻の兄弟姉妹のものになっていくのです。これが「姻族」への相続となるのです。

 

(2)「財産を渡したい人に渡す」ために遺言書を活用

田中家として、実家の土地を所有するには、どうすれば良かったでしょうか? 対策は2つあります
 

◇遺言書を作成する

一点目は、遺言書を作成することです。それは、長男の万が一に備え、実家の土地について、次男家族が相続できるように遺言書を作っておくべきでした。

もちろん、長男の妻には、株式や金融財産を相続させるなどの配慮が必要となりますが、遺言書に相続について明記することで、田中家は、実家の土地を次の代につなげることが可能となるのでした。しかし 多くの方は、妻の住む場所を確保したい、慣れた場所で老後も過ごしたいと思うはずです。
 

◇信託制度を活用する

二点目としては、信託制度を活用することです。
長男様の自宅等資産を「長男の相続後は長男妻に、その後長男妻の相続時は長男の弟に(次男家族に)」という信託契約を長男様委託者で行います。

その結果、「長男 → 長男妻 → 次男家族」に実家がいきますので、田中家として実家を所有し続けることができます。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。