中村亨のビジネスEYE

小規模宅地の3年縛り-50%評価減の適用除外へ

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平成30年度の税制改正で不動産等の貸付事業を行っている土地に活用ができる、小規模宅地等の特例について大きな改正がありました。

相続開始3年以内に新たに貸付事業用に活用した宅地について、小規模宅地等の特例の範囲から除外する、いわゆる「3年縛りの規制」です。この3年縛りには経過処置がありましたが令和3年3月31日をもって終了しました。背景として、不動産購入による駆け込みの節税対策を防止する狙いがありました。

これから不動産を建築、売買などによる相続税対策を検討されている方にとって、この3年縛りの内容は非常に重要なポイントです。今回のビジネスEYEでは、小規模宅地等の特例と改正の内容についてお伝え致します。

小規模宅地等の特例とは

お亡くなりになられた方の自宅や、事業で使っていた事務所、賃貸不動産の土地部分について一定の要件を満した場合に【最大で80%の評価減】を受けることができる特例です。

<小規模宅地等の種類>
①ご自宅の土地・・・330㎡まで80%減
②自営業の土地・・・400㎡まで80%減
③貸付用の土地・・・200㎡まで50%減
大きく分けて上記3つに分類されます。

小規模宅地等の特例の改正内容について

今回改正の対象となったケースは貸付用の土地についてです。

[改正前]

改正前は、駐車場として活用していた土地に収益不動産等を建設した場合、相続が発生したら、200㎡まで50%の小規模宅地等の評価減を受けることができました。

[改正後]

これが改正により、貸付事業用の土地に対して相続開始前3年以内に事業を開始した不動産の土地については、小規模宅地等の特例の除外となりました。

経過処置として平成30年3月31日までに貸付を開始した不動産については適用を受けることが出来ていましたが、その経過処置も令和3年3月31日をもって終了となりました。また、除外対象となる不動産は、建設して取得した不動産以外に、売買で取得した不動産も対象となりますので注意が必要です。

改正内容が与える影響

新築物件を建設した場合

例:土地面積100㎡ 路線価230万円(不動産の引き渡しから3年以内に所有者に相続が発生)

[改正前](平成30年3月31日以前引渡し)

100㎡×230万円= 23,000万円・・・土地の相続税評価
23,000万円×50%= 11,500万円・・・小規模宅地等適用後の相続税評価

[改正後](平成30年4月1日以降引渡し)

100㎡×230万円= 23,000万円・・・土地の相続税評価

改正前と改正後では評価として2倍の差が生じますので、相続税に与える影響も大きくなります。

例外となるケース

今回の改正内容でも例外的に小規模宅地等の特例が適用できるケースがあります。
①継続的に事業的規模で特例貸付事業を営んでいる場合。
②3年以内に相次相続が発生した場合。

①は平成30年4月1日以降の相続の場合、②は平成31年4月1日以降の相続の場合に適用されます。

①の事業的規模とは所得税法上の不動産所得の該当性を判断するために用いられる、5棟10室を基準としています。この特例を適用する際には相続税の申告書類と共に事業的規模を証明する不動産の収支内訳書を提出する必要があります。②の相次相続については駆け込みの相続対策で特例の適用を受ける為ではないので、対象から除外する事が可能となります。

今後の対策として

これから相続税対策で賃貸不動産の建築や購入により、小規模宅地等の特例の活用を検討されている方は、対策直後から3年間は相続税の推移を確認する事が重要です。賃貸不動産の取得により節税対策が完了していると思っていても、3年以内の相続が発生してしまうと、状況が一変する可能性があります。

相続税の対策はなるべく早く長期的な視点で取り組むことが重要なので、ここ最近のうちに相続税対策を行った方は、今一度現状の相続税について確認されてみてはいかがでしょうか。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。