中村亨のビジネスEYE

個人型確定拠出年金(iDeCo)のメリット・デメリット

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昨年、金融審議会による「老後の生活を送るには2,000万円の資金が必要」とする、いわゆる2,000万円問題がメディアを騒がせました。実際のところ2,000万円という数字だけが独り歩きしてしまったため、数字の根拠としては乏しいという結果に終わりましたが、これを機に老後の生活資金について考えられた方も多かったのではないでしょうか。
 

老後の生活資金を形成していく手法は様々ありますが、その時々の情勢に合わせたライフプラン、マネープランが重要で、国の政策としても個人が資産形成をする際には、いくつか税の優遇措置を設けています。

今回のビジネスEYEでは、その優遇措置の一つであり今年度の税制改正の対象にもなっている個人型確定拠出年金(通称:iDeCo)の内容と、そのメリット・デメリットについてお話したいと思います。

◆個人型確定拠出年金(iDeCo)の特徴◆

iDeCoは、ご自身で掛け金を拠出し運用方法を選びます。
最後に、今までの掛金とその運用益の合計を給付金として受け取れる制度です。

加入対象者は日本に居住している20歳~60歳未満の自営業者、会社員、公務員、専業主婦など加入対象の幅が広いのが特徴です。

5,000円から掛金を設定することが可能で、支払った全額が所得控除の対象になり、所得税と住民税について節税効果があります。

また、加入対象者それぞれで掛金の上限が決まっています。
・自営業・・・・・・816,000円
・会社員、公務員・・144,000円~276,000円
・専業主婦・・・・・276,000円

■改正内容

【1】加入年齢の引き上げ  60歳 → 65歳
60歳以降も働く方で、厚生年金保険に加入していれば、
現行の60歳から65歳まで加入年齢が引き上がります。

【2】受給開始年齢の柔軟化 
働く世代の高年齢化に合わせて受給開始年齢が引き上がります。
現行:60歳~70歳 
改正後:60歳~75歳

受給開始年齢(60歳)に達した場合、受給開始年齢を自分の好きなタイミングに選択できますので、
改正後は、70歳以降に設定することも可能になります。

【3】企業年金と個人年金の条件緩和 
会社員のIDeCo加入を認められるためには、企業型の掛け金上限を3.5万円まで
引き下げる必要がありましたが、

改正により、企業型の掛け金が5.5万円までであれば企業型とiDeCoが併用
できるようになるため、会社員の方がiDeCoに加入しやすくなるメリットがあります。

※上記改正内容の適用時期に関しては未定となっています。

このように、加入者が増えるように制度が改善された形ですが、
注意すべきポイントもいくつかあります。

■メリット・デメリット

【メリット】
・掛け金が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になる
・資産運用中は税金が課税されない(ただし、受取時は課税対象となる)

【デメリット】
・原則60歳になるまで引き出しができない
・運用成果によって元本が減少する可能性がある
・開設時と維持管理に手数料負担がある
・受取時に税金が課税される
・投資に関する知識が必要

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また、iDeCoは自分自身で資産運用を考える必要があります。
原則60歳になるまで引き出しができないので、それが原因で加入をためらう方も多いようです。

iDeCoは老後のための資産形成を、税制メリットを活かしながら長期間にわたり準備するものです。
税制改正により、加入するメリットが拡充したものの、元本減少してしまうリスクなども持ち合わせているため、投資に関する知識が必要となる側面もあります。

 
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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。