フリーター急減で岐路に立つ事業モデル
未分類
総務省が2020年2月14日に発表した労働力調査の詳細集計によると、フリーター人口は2019年に138万人となり5年連続で過去最低を更新しました。背景には就職率の改善があり、2016年~2018年は高校・大学の卒業者のうち卒業時に就職しなかったのは2万人強と、過去20年で最も低い水準でした。
「フリーターの急減」は、卒業後に可処分所得の高い正規従業員になる学生が増えることで個人消費が伸び、景気回復の契機となるように見受けられますが、同時にこれまでの事業モデルを脅かす問題を持ち合わせています。
今回の【ビジネスEYE】では、「フリーター」の言葉に隠されたもう一つの急減の理由とともに、求められるビジネスの構造転換について考えます。
(参考:日本経済新聞/2020年2月15日)
1.フリーターが減少する半面、非正規雇用者全体の数は増加
フリーター減少のもう一つの理由には、1970年から1984年までに生まれたいわゆる就職氷河期世代の非正規雇用者が年を重ねたことがあります。
総務省は「若年層(15歳~34歳)のパート・アルバイト及びその希望者」をフリーターと定義しています。一方、パート・アルバイトに限らず、「非正規雇用者」の数を見てみると、35歳から54歳の非正規雇用者は2019年には約790万人と過去20年で6割増加しています。
つまり、非正規雇用者全体の数は増えていますが、その中の「フリーター」は言葉の定義に年齢制限があるため減少している、という状況です。
「フリーターの急減」は、可処分所得の高い正規雇用者が増加することで個人消費が向上し、それによって景気回復が期待できる、という単純な図式で捉えることはできないでしょう。
2.非正規雇用に頼ってきたこれまでが異常
とはいえ、フリーターはコンビニエンスストアなどの小売や外食の現場を担ってきました。その数が急減することは、これまで若年層の非正規雇用に頼ってきた業種に深刻な働き手不足を招きます。
外食や小売の業界では、AIやIoTを活用した省人型、あるいは無人店舗を実験的に導入し、業務の効率化を模索する動きもありますが、全てを置き換えるのは難しく、またそれが浸透するまでには多くの時間がかかるでしょう。
「付加価値の源泉である接客を、低賃金のパート・アルバイトに頼ってきたこれまでがむしろ異常だった」と指摘する声もあります。働き手不足、という現実を目の前にして、非正規雇用に支えられた事業モデルの変革が迫られています。
3.求められるビジネスの構造転換とは
労働力の問題について考える時に想起するのが、株式会社コーポレート・アドバイザーズM&Aが昨年末に開催した「M&Aサミット2019~次世代へ繋ぐ、トップの決断」の基調講演の内容です。
講演のサマリーから抜粋してご紹介します。
若い人口が減少し高齢者が増加する時代を迎え、今後も経済発展を続け企業経営を維持していくためには、産業構造、ビジネスの発想、一般消費者の価値観も変えていかざるを得ないでしょう。
大量生産・大量販売の拡大型のモデルから、少量生産・少量販売の「小さくても豊かな国」にシフトしていく戦略が重要になってくのではないかと考えます。
※講演のサマリー全文はこちらからご覧いただけます
変革しなければならないのは、日本の産業の成功モデルであり、消費に対する価値観であると講演では述べられました。
今経営者に求められているのは、低賃金のパート・アルバイト、非正規雇用に支えられた事業モデルからの脱却、つまり「働き手」を含め人口動態を見越したビジネスの構造転換と言えるのではないでしょうか。