上場企業の会計・経理不正、最多64社に
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経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は、2月13日に予定していた決算発表を延期。
2019年10~12月期の四半期決算報告書の提出期限延期を申し出ていた、と報じられました。
延期は関東財務局により承認され、過去の決算についても訂正するそうです。
上場企業の不適切会計が相次いでいます。
2019年は11月末までに64社が不正の発生を開示し、これまで最多だった2016年(57社)を上回りました。
日本企業の国際化が進み、中国など海外子会社や合弁会社などで不正が起きやすくなっていることが原因の一つと言われています。
日本公認会計士協会・手塚正彦会長は、これらを受け、
「不適切会計に関連して監査の重大な不備が指摘されることになれば、監査の信頼性を損なうことが懸念される」と声明を発表。
不正リスクへの対応基準を改めて確認するよう呼びかけを行いました。
今回の【ビジネスEYE】では、会計・経理の不正から、その先の未来を探ってみましょう(参考:日本経済新聞/2019年12月4日)
1.なぜ会計・経理の不正は急増したのか
東京商工リサーチが上場企業を対象に、財務諸表に影響する可能性のある不適切会計や役員・従業員の経理不正を集計したデータがあります。
●不適切会計開示企業推移
2010年 24社
2011年 31社
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2016年 57社
2017年 53社
2018年 54社
2019年 64社
過去10年で2.7倍と、上場企業数が増えたことを考慮しても増加が目立っています。
発生当事者としては、国内外の子会社や関連会社、合弁会社で発生したケースが多いそうです。
日本経済新聞の集計によると、64社のうち18社が海外で発生。
企業の海外進出が一般化するなか、現地人材に権限が集中し、本社の監視の目が届かなくなっているケースが多いと見られています。
日本経済新聞の誌面では、下記の具体例が挙げられていました。
●中国の合弁会社で資金の不正引き出しが発生
合弁相手の中国企業が派遣した取締役らが預金口座から資金を不正に出金。
本社で資産の評価見直しを含め約130億円の持ち分法投資損失を計上。
●中国子会社で必要な費用が計上されない
両社に共通するのは、本社の監督が不十分となり、会計事務所も十分に機能しなかったことと考えられます。
2015年以降、内部通報制度の実効性が高まり、不正をあぶり出しやすくなったとの分析も頷けますが、海外・国内関係なく、子会社や孫会社へのチェックが行き届かなくなっているからこその件数であり、グローバル時代に対応した経営管理体制の構築が急務だと言わざるを得ないでしょう。
2.会計・経理の未来
資本主義のインフラである企業会計は、グローバル時代だけではなく、相次ぐM&A(合併・買収)による組織再編にも柔軟に対応していくことが求められています。
公認会計士試験の受験者数が低迷していると言われる昨今、時代の要請に応えるために、AI(人工知能)監査が使われ始めています。
現在開発中のシステムであれば、企業の基幹システムと常時接続し、日次の売上高や経費、利益のほか、契約書やメール内容、社員のオフィス入退出など幅広いデータを独自に分析。
24時間リアルタイムで会計不正がないかどうかチェックするとともに、業務報告書にまとめて経営者に提供することが可能になると言います。
魔法のような話にも聞こえますが、決算期を迎えた企業が財務諸表を作成して、監査法人が事後的にチェックするのではなく、企業と監査法人がシームレスに点検を繰り返すことも可能だというので、さらに唸ってしまいました。
AI元年と言われる2016年以降、活用の流れは大きなうねりとなり、あらゆる業界を席巻してきました。
しかしながら、まだまだデータ収集に課題があるなど、充分に実力を発揮できないケースも少なくないそうです。
本社と子会社のシステムが別々だったり、現場で使いやすいように加工したデータをそのまま使用したため、AI自体は正常に作動していても分析ができなかったり…
万能ではないAIではあるものの、経営管理体制を刷新する組織の一員に組み込まれていく未来はもうすぐそこまで来ています。
その舵取りをする会計士も、あらゆる知恵を絞って品質向上に取り組み続けなければいけませんね。