高齢化・認知症の生前対策「家族信託」続編
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年末年始にかけてご家族で集まると、ご親族の相続や遺言について話をする良い機会となるようです。
それがきっかけなのか、特に年が明けますと、私たちにも数多くのご相談をお受けすることとなり、年々その相談件数が増加しているのを感じます。
日本クレアス税理士法人を核とした、日本クレアス財産サポートでは、相続対策について様々な角度から包括的なご提案をしています。
特に遺言書作成のご相談は比較的多いと感じていますが、同時に、遺言書だけでは相続対策として充分ではないということも感じます。
遺言で財産の帰属先を決めることは可能ですが、生前の財産管理においては、ご本人に決定権があり、ご本人の判断能力が低下した場合の対応が難しくなってしまいます。
遺言で対応不可能な部分を柔軟に対応が取れる方法―
それが「家族信託」です。
介護状態、認知症、判断能力の低下など、ご両親が高齢になっていることで、最後まで財産を管理・処分できないのでは?
とのお考えから不安を抱く方は多くいらっしゃいます。
今回の【ビジネスEYE】では、2019年12月13日配信分「家族信託」の続編として、具体的な例を用いてご紹介いたします。
1.事例で見る「家族信託」
今回ご紹介する事例は「家族信託」として、高齢の親御様を委託者、そのお子様を受託者として締結した信託契約の2つのケースです。契約内容は自由に決めることができ、信頼のおける家族・親族に委託できるので、将来安心して相続を進めることも可能になります。
事例1:お父様の介護状態・認知症が不安であった場合
■背景
・お父様80歳(配偶者なし)
・不動産を含めた相続財産を所有している。
・お子様は長男、次男、長女の3人。
※今のところ日常生活において、自分で行えているがお子様は仕事をしており、何かの際にすぐに駆け付けるのは難しい。
また、体力の衰えや物忘れが増えており、怪我による介護状態やこの先認知症を患うのではないかと不安があった。
家族信託ご提案
お父様の判断能力があるうちに、近くに住む次男の方を受託者として、ご自宅と現預金を信託財産とする信託契約を締結しました。
契約締結後、信託口座を作成しお父様に代わって現金の引き出しが自由となりました。
お父様は、まだ認知症の発症はしていませんが、介護施設の入居手続きや費用の支払いも、
信託口座を活用することで、本人に代わって完結できました。
また認知症発生後、住まなくなったご自宅を売却する対応も可能となり、大きな出費への対応も可能となりました。
このケースは今後高齢化が進む日本では一番多くなると事例ではないでしょうか。
事例2:不動産の管理・処分について不安である場合
■背景
・お父様83歳、お母様81歳
・共有賃貸不動産を含めた相続財産を所有している。
・お子様は1人
※現状は大きな問題は起きてはいないが、これから判断能力低下や迷いが多くなった際、財産処分や賃貸管理について不安があった。
また、財産の一部を本家筋へ返したいという思いがある。
家族信託のご提案
ご両親の判断能力があるうちに、お子様に賃貸不動産とご自宅を信託財産とする信託契約を締結しました。
信託契約を締結した後、ご両親が認知症を発生する前から賃貸管理と不動産処分の権限をお子様へ付与しました。
このケースではご両親が元気な時にお子様に引き継ぐことで、
不動産管理の流れを把握するとともに、財産管理の承継をスムーズに進めることが出来て、
この先判断能力が無くなったとしても、賃貸不動産の契約等の管理も本人に代わって行えるようになりました。
また、財産の一部を本家筋へ返す方法については、
信託契約を終了する際に、財産の帰属先を設定することで可能となりこの点も解決に至りました。
2.もし信託契約を結ばずに判断能力を失ってしまったら…?
事例1では、ご本人の預金を自由に引き出すことが困難になり施設の入居費用の工面や、その他まとまったお金が必要な際にも身内で支払いを工面しなければなりません。
売買を行うに当たっては、仮に認知症が進んでしまうと売却自体が出来ないことで余計な税金や心理的不安が増大したのではないでしょうか。一般家庭にとっては大きな支障となる恐れがあります。
また事例2では、不動産の契約、修繕、売買すべての行為に支障をきたします。
急な費用の工面や支払いも出来ず、相続対策も立てにくくなりますし、不動産経営を引き継ぐため分からないことが多く、対応に困るご家族を多く見受けます。
不動産オーナーにとって上記のリスクは、よくありがちともいわれますが、経営をする上では一番の支障となります。
家族信託は自由な契約設計が可能なため、今後も需要が増えると思います。
家族信託により、ご家族が認知症、介護状態となり、判断能力が低下した場合のリスクについて、早期に検討してみてはいかがでしょうか。