加速する「ポータグルメ」―新たな産業の土壌となるか―
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HOT PEPPERグルメ外食総研が、2019年の食のトレンドを表す「ポータグルメ」という言葉を発表しました。
家庭外で調理された食品を購入し、持ち帰りもしくは配達によって家庭内で食べる食事の形態「中食」が進化したものです。所謂コンビニのお弁当を指していた「中食」ですが、外食事業者が参入したことにより、よりボーダレスに発展していくと期待されています。
人手不足により個人の役割が増加してより多忙となり、いわゆる「コスパ」よりも、世の中全体で時間効率のアップが求められたことが背景と言えるでしょうが、今注目のこの市場で、更なる成長に向けて激しい戦いを繰り広げている企業があります。
今回の【ビジネスEYE】では、加速する「ポータグルメ」の世界を覗いてみましょう。(参考:日本経済新聞/2019年6月5日)
1.ウーバーイーツvs出前館
ユニコーン企業(時価総額が10億ドル以上の未上場企業)として名を馳せた、
ライドシェア最大手の米・ウーバーテクノロジーズが、5月10日にニューヨーク証券取引所で上場したことはご記憶に新しいことと思います。
そのウーバーが2015年からスタートしたのがネット出前サービスの「ウーバーイーツ」です。中核事業の配車サービスに代わる成長分野として、世界500以上の都市を席巻しています。
2016年に日本に上陸し、群雄割拠の中食市場で頭角を現してきました。タピオカミルクティー1杯だけでも配達してもらえる手軽さが人気の秘訣かもしれませんね。
ウーバーイーツの猛追に対抗するのは、2000年にサービスを開始した「出前館」(運営:夢の街創造委員会株式会社)
複数店舗のメニューを一覧し、その場で出前を注文できるポータルサイトからスタートした企業で、1日約8万件、年間約3000万件の注文をさばく業界のリーダー的存在です。
2019年8月期には上場以来初めて、3億円の営業赤字に転落する見通しで、先月末時点での時価総額は昨年9月の半分以下である600億円にとどまり、非常に厳しい戦いを強いられています。
ウーバーイーツの強みは、バイクや自転車を持つ一般人を「配達パートナー」として組織し、空き時間を使って料理を運んでもらう点にあります。
ライドシェアで培った人員配置や料金変動のノウハウを最大限に活用して、ネットで仕事を受発注する「ギグエコノミー」を発展させています。
多様化する働き方にも対応している点は、非常に評価されるべきポイントではないでしょうか。
これに対し、出前館は赤字覚悟の勝負に出ると言われています。
自前の配送拠点を増やし、システム開発にも30億円を投じることで、注文から配達までの時間をいかに短くできるか、強気の姿勢で配送品質を高める目論見とのことです。
日本最大級の短期・単発アルバイト求人サイト「Shotworks」や、新聞配達店とも提携し、配達代行サービスも強化するそうです。
ウーバーイーツと比較すると経営規模の小さい出前館が、成長投資で競り勝てるのか、決着は意外と早いものになるのかもしれません。
2.ポータグルメが新しい価値を創造する
今年の4月、LINEがテイクアウトサービスをリリースしました。
外食大手のすかいらーくや、「いきなりステーキ」のペッパーフードサービスといった有名企業も配達事業を強化。
一方で、Amazonは先月11日に食事の配達サービス「アマゾン・レストランツ」からの撤退を発表しています。
まさに枚挙に暇がない状態で、大小入り乱れた激しい競争環境にあります。
そこで注目されているのが、食事の配達で構築した物流網を宅配便にも使用する案です。
単身世帯でなかなか受け取れないことによる宅配便の再配達を減らす可能性が示唆されています。
大手のテクノロジー企業がすでに目を付けており、食事の配達をするスタートアップ企業に多額の資金が集まっているそうです。
また、LINEのカンパニーエグゼクティブCMO・藤原彰二氏は、「ユーザーのお気に入りの店舗がLINEのデリバリーに、ユーザーの後押しで加わったとする。
そうすると、LINEがユーザーにLINEのサービスで利用できるポイントを付与するといったモデル」を展開し、「『CtoB』の世界にチャレンジする」と話しています。
今年の10月に控えている消費税率の引上げでは、テイクアウトやデリバリーが軽減税率の適用となるため、更に加速するとされるポータグルメ。
単純にお弁当を運んだり受け取ったりするだけではなく、物流への発展や消費者との接点を作るといった新しい産業の土壌になる可能性は高いと言えるでしょう。