あるとき、星さんのところに税務署が税務調査に入ったという話を耳にした。
でも追加で1円も納めることはなかったという。
星さんは過度な節税は(もちろん脱税も)していなかった。
昔の僕だったら、「お金持ちはカネに汚いところがあるはず」なんて勘ぐったかもしれない。
でも、星さんに出会って、まじめにやっていて成功する人もいるのだと知ることができた。
僕はまだ星さんの足下にも及ばないけれど、いつかは追いついていきたい。
真っ当に生きて、自分のビジネスや経済的な自由を手に入れて、豊かな気持ちで生きていきたい。
僕は、オーディオ通販の事業が軌道に乗りはじめたころに、『金持ち父さん 貧乏父さん』の本に出合った。
その本で、投資やお金を働かせる方法を知った。
それに星さんとの出会いもあって、投資やビジネスに興味をもちはじめた。
でも、そのころはまだ、投資やビジネスが面白そうなんて思って口には出せなかった。とりわけ星さんの前では。
当時の僕は、働いて稼いで社員が一人でも雇えたらいいなというそんなレベルだったのだ。
でも「金持ち父さん」の本を読んでから、日本でも何かそれに近いことができるのではないかと模索していた。
そして、関心を引かれたのが不動産投資だった。
なぜなら、一番の理由は星さんが「金持ち父さん」のような人に見えたから。
本を読んで「あれはアメリカの話だよ、日本じゃ同じことはできないよ」という人がよくいる。
でも、実際にやっている人がいて、成功している姿を目の当たりにしてしまうと、日本でも通じる話なのだと信じることができる。
けれども、多くの人は成功している人を実際には知らないから、踏み出す勇気が生まれないのかもしれないし、日本で実現できるとも思えないかもしれない。
星さんは僕にとって、日本版の「金持ち父さん」だ。いまでもいろいろと教えを乞い、支えてもらっている。
その星さんが、かつて僕が渋谷の美容室にいたころに、こう諭してくれた。
「最大の効果的な投資は自己投資だよ。別に仕事や利益に直接、結びつかなくたっていいんだ。好奇心のおもむくままに自己投資をしてみるといいよ。それによって自分の適性が発見できるし、日標を定めることもできるから」
僕は、アドバイスにしたがって自己投資をした結果、自分の適性を発見できたと思っている。
そして僕が見つけた目標は星さんだ(目標までのハードルはまだまだたくさんあるけど)。
「目標を定めたなら、自分のできそうなこと、実現可能なことから始めるんだ。それを超えたら、もう少し大きな目標を立てる。これを繰り返していくと、最終目標にたどり着ける」
星さんはさらに「他人がどんなことをして稼いでいるかは問題ではない」と言っていた。自分の身の丈に合った資金運用や投資の積み重ねが大事で、そういう意識や感覚が、学んだり経験を重ねたりすることで身についてくるのだという。
そういえば僕を銀行に引っ張っていった帰り道、こんなことを言っていた。
「これまで、君には若さと勢い、それに学ぶ心があった。運もあったかもしれない。だから君の真価が問われるのはこれからだよ」
また、所有する不動産が10棟を超えたころには、慢心をいましめる意味だったのだろう、こんなことを語ってくれた。
「人は、これまでの努力を無駄にしたくないという思いを持っている。だから、自分にとって都合の悪い情報から目をそむけがちになるんだ。それで、都合のいい情報だけを好んで、希望的観測をするようになる。でもビジネスや投資で希望的観測ばかりをしていたら、破綻してしまうのは時間の問題だよ」
だから僕は、物件を買うときにはどこかにリスクがないか徹底的にリサーチをすることを肝に銘じている。リスクとリターンを比較して、そのうえで投資を行うかどうかを判断するようにしている。
大事なのは勉強と小さな失敗、それに行動と経験
不動産投資で物件を選ぶとなると、最初のうちは、不動産の知識とか、お金の流れ、経済の流れ、そして税務知識、建築や保険などいろんな知識が必要だ。
たとえば、3000万円の不動産を買った場合、年間に支払う税金は10万から20万円くらい。
月でいえば1万から2万円くらいだ。
僕は最初、税務知識はそれほどなかった。
不動産投資をしていきながら、徐々に身につけていった。
それで大丈夫だった。
ほぼ完壁に学んでから一歩前進するよりも、最低限の勉強をしたうえで小さく進んで、小さな失敗をする。
また進んでは失敗してというのをくり返す。
そうして学んで成長していくことのほうが重要だと思う。
もちろん最初から税務知識やそのほかの知識があるに越したことはないけれども、それよりも、まず学んで一歩を踏み出す。
そして足りない部分は自分のチーム(専門家や仲間たち)にサポートしてもらう。
リスクヘッジは大切だけれども、行動に踏み出したほうがより早く成功を手にできると思う。
経験をしないと見えてこないものがあるはずだ。
経験という臨場感の積み重ねと、学んだ知識が多くのリターンを与えてくれる。
だから僕は、自分のためにお金を働かせるには、勉強と小さな失敗、そして行動と経験が大事だと信じている。
でも、不動産投資についていえば、第一歩の踏み出しで失敗する人が多い。
その原因はたいてい、無知であったり自分の器よりも相当大きな物件を買ってしまったりするせいだ。
学びがないので自分で判断できず、不動産屋や他人に頼ってしまい、結果、ハズレ物件を買ってしまうことがある。
また、最初からハードルを高くしてしまうと失敗する。
たとえば預金100万円くらいの人が3億円の物件を少ない頭金で買うのは無謀だ。
キャッシュフローが回っていたとしても、何かトラブルがあった時点でお金がなくなり、物件を手放さないといけないし、最悪、借金まで背負う羽目になるかもしれない。
生活に少し余裕ができたら、少しの投資から始め、経験を積み重ねながらより高い日標を目指すのが、リスクの少ない投資法なのだ。
そして手元に入って来たお金は、その20%でも50%でも、あるいはまるまるを残しておくことが重要だ。
いい物件が目の前に出てきたとき「機会損失」をしないために蓄えておく。その発想がない限り、お金を増やすのは難しい(僕はやらずにプラスマイナスゼロでいるよりはやってみて損したほうがいいと思っている)。
またお金持ちになるには「人がどうしてそういうことを言うのか」ということを読み取る能力も必要だ。これも星さんから教わったことだ。
人の意見と事実を見極める
誰かがあなたに「この生命保険がいいですよ」と勧めてきたとする。
それはその人が生命保険を売りたいから言うだけかもしれない。
そうだとしたら、「いいですよ」と勧めるのはその人の意見でしかない。
本当に自分にとっていいかどうかはわからない。
相手の意図を知ったうえで、それは営業なのか、本当に自分のために言ってくれているのかを見極めることが必要だ。
たとえば僕が誰かに、
「1000万円を投資して、毎年10%のリターンがある投資先はない?」
と聞いたとする。すると聞かれた相手は、
「そんなのないよ、いまは低金利だもの」
と答える。
それは「事実」でごくごく常識的な答えに思えるが、本当は違うかもしれない。答えた本人が、「ない」と思っているだけの話だ。
そういうリターンを生む運用先は絶対にある。あるけれども、その人が知らないだけなのだ。
不動産投資も同じで、「利回り10%以上の物件はないの?」
と聞くと普通はみんな、「そんなのないよ」と答える。
そして「そんな物件があったら自分で買うよ」とつけ加えるものだ。
でも、そう言うのは、その人が情報をもっていないだけの話で、それは答えた人の意見であって、事実ではない。
ほかの人に聞いていれば、「あるよ、知っているよ」と答えるかもしれない。
何が事実で、何がその人の意見なのか。それを見極められなければいけない。
成功への近道は経験と信用を得ること
そして、もしもいま、あなたが不動産投資家を目指しているのなら、僕はこういうアドバイスをする。
「まずは100の物件を見て回ってください。そうすれば、いい物件を見つけることができますよ」
このときは自分の足で回って自分の日で見るのが原則だ。
販売図面やインターネットなどで資料を見ることも重要だけれども、それだけではなく実際に現地に足を運んで物件を見て回らなければいけない。
とはいっても、最初からそんなにいい物件に出合うことはあまりない。
たくさんの物件を見て経験を積んでこそ、物件の良し悪しがわかるようになるものだし、日ごろのつき合いの中で不動産業者との信頼関係も築かれていくものだと思う。
成功への近道は、回り道のように思えるかもしれないが、経験と信用をつけていく道のりの中にあるのだと思う。
「学ぶことを止めてしまうと、その人の成長も止まってしまう」
そんな星さんの言葉を信じて、僕は今も学びつづけている。
次の章では、僕が自分の経験から学んだこと、そして星さんから教えてもらった投資のヒントを、アドバイスの意味を込めて書き記していきたい。