中村亨のビジネスEYE

シェアオフィスへ続々移転。未来のオフィス像とは

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本社をシェアオフィスへ移す動きが相次いでいます。
コロナ禍で在宅勤務など新しい働き方が広がる中、事業動向に合わせ利用面積や賃料を柔軟に変えられるメリットもあるためスタートアップだけではなく、ディー・エヌ・エーやメタップス、クックパッドなど大手も続々と移転しています。

今回のビジネスEYEでは、オフィス像の未来について見てみましょう。

■シェアオフィスを選ぶ理由

東京都渋谷区のシェアオフィス「ウィーワーク」に移ったのは、フリーのIT人材を仲介する上場スタートアップのギークス株式会社。
同社代表は、期間契約の一般的なオフィスビルより、シェアオフィスは「事業の成長に伴う社員の拡大など、環境変化に対応しやすい」と評価しています。

同じくウィーワークに移った株式会社ディー・エヌ・エーは「コロナ禍で先行きが見えにくい中、固定賃料を支払い続ける従来型オフィスより合理的」と判断。2012年の開業と同時に入居している「渋谷ヒカリエ」の7フロア計2,800席もの広さを解約し、移転先では700席程度に減らしています。

■「スペースを借りる」だけではないシェアオフィス

ウィーワークはアメリカの巨大ユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)です。2018年に日本に上陸後、同じスペースを複数の利用者によって共有するオフィスという機能と、集まる人達をつなげてコミュニティを作る機能も併せ持つことを特徴としたシェアオフィスです。

つまり、レンタルオフィス事業者との大きな違いは「イノベーション」であり、コワーキング(=協業)によるビジネスチャンスの創出を生み出している点にあります。

シェアオフィスの利用には、セキュリティ管理や自社のカルチャー醸成、社員同士の交流といった課題があるものの、ウィーワーク・ジャパンCEOは「シェアオフィスは場所を柔軟に使えるだけでなくビジネス交流の起点になる」と強調します。

■未来の鍵を握るのは「ハイブリッド型」

オフィスビル仲介大手の三鬼商事によると、東京都心の平均空室率は17か月連続で前月と比べて悪化しています。日本企業はこのまま「脱オフィス」へと変化していくのでしょうか。

テレワークでは、コミュニケーションやマネジメントの問題により生産性が上がらないとする意見も徐々に増加しています。本社をシェアオフィスに移動したディー・エヌ・エーでも「目的に応じて『集まる場』としてのオフィスの場所は重要性が高いと考えています」とプレスリリースで発表しています。

コミュニケーションの道具としての「オフィス」は、その形を変えても今後も必要であることは間違いないでしょう。

反面、テレワークには勤務環境の整備・コミュニケーションやマネジメントといった課題があるものの、それを解決するための業務プロセスのデジタル化・再構築はDXの推進、ひいては働き方改革に繋がるという利点もあります。テレワークの導入は、企業の存続や成長のためのよいきっかけと捉えることもできます。

今後問われていくのは、これら対面コミュニケーションとテレワークの良いところを組み合わせた「ハイブリッド」な働き方の構築ではないでしょうか。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。