中村亨のビジネスEYE

路線価6年ぶり下落の今こそ注目される、相続税対策

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7月1日に令和3年分の路線価が発表されましたが、国土交通省が今年3月に発表した公示価格と今回の路線価の全国平均は、平成27年以来実に6年ぶりに下落するという結果になりました。新型コロナウイルスの影響によるものですが、特に緊急事態宣言の煽りを受けた格好で商業地を中心に下落しました。

今回のビジネスEYEは、公示価格、路線価の下落によるメリット、デメリットについてお話ししたいと思います。

路線価とは

不動産の査定や相続税・贈与税の計算をする際に、その税額を決める計算の基準となる数値の事を「路線価」と言い、路線(道路)につけられた価格の事です。路線価には相続税路線価と固定資産税路線価の2種類ありますが、一般的には相続税路線価のことを指しています。

公示価格や路線価が下がったことによるメリット、デメリットは以下の通りです。

【メリット】

・相続税、贈与税などの税金が安くなる
・不動産を安値で購入できる可能性がある

【デメリット】

・不動産の資産価値が下がることで不動産が高値で売れなくなる

メリット①:相続税・贈与税の減額

例えば、路線価が40万円で200㎡の土地を保有していた場合、路線価が前年比で5%下落したと仮定すると、相続財産が400万円減少する結果となります。

昨年(相続税評価額):40万円×200㎡=8,000万円
今年(相続税評価額):38万円×200㎡=7,600万円

相続税評価額が減少すると、当然相続税や贈与税についても減額されることになります。

固定資産税評価額は上昇

また、不動産に関する税金には固定資産税もありますが、こちらは3年に1度、評価を見直すようになっており、令和3年が3年に1度の評価替えの年となっています。路線価は前年比で下落はしているものの、前回の固定資産税評価年である平成30年から令和1年、令和2年と価格上昇してきた背景もあり、今年の下落だけでは過去2年分の上昇を相殺するには至らず、固定資産税評価額は前回より上昇している不動産が多いようです。

ただし、新型コロナウイルス対策の一環で、仮に固定資産税評価額が上昇しても、宅地や農地の固定資産税額は前年度を超えないような措置が取られますので、税額は昨年と同じ金額に設定されることになります。

固定資産税については、評価の仕組み上、実際の納税額にその影響が現れるまでにはタイムラグがありそうです。

メリット②:不動産を安値で購入できる可能性

公示価格が不動産取引価格を決める際の一つの指標となるため、公示価格や路線価の下落は取引価格の下落に繋がる可能性があり、市場から安い金額で不動産を購入できる可能性があります。ただし、不動産の取引価格の決める要因は、全て公示価格等によるものではないため注意が必要です。不動産取引は、売り手と買い手による需要と供給のバランスも影響するからです。

例えば、一部地域では、新築物件の供給がコロナによる景気悪化を懸念して、減少している傾向にあり、その結果需要と供給のバランスから品薄になり、価格上昇しているケースが見られます。また新築が高値で取引されることで、中古物件についても価格上昇している傾向にあり、公示価格の下落が必ずしも不動産の取引価格に影響を及ぼすとは限りません。

ですが、この現象をうまく活用すれば、取引価格と路線価格との差額によって資産価値を担保しつつ、相続税を抑えるといったことも可能です。

資産価値を保ちながら相続税対策をする例

最たる例としてよく用いられるのはマンションの購入です。

①高層マンションの上層階を購入

上層階の価格は高額ですが、建物部分の相続税評価はあくまで躯体そのものの価値で評価しますので、時価と相続税評価に乖離が生まれます。

②世帯数が多いマンションの場合、土地所有権面積は少量になる。

土地の所有権は建物全体の面積から、所有している占有面積の割合分だけであり、高層マンションの場合には所有している土地部分はごくわずかとなります。その結果、時価と相続税評価に乖離が生まれます。

このように、公示価格や路線価の下落とは相反して、取引価格が上昇している物件では、取引価格と路線価との乖離によって、資産価値を担保しつつ、相続税の評価減対策が可能です。

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今後、不動産の市況がどのように変化するか、先読みをすることはできませんが、不動産の購入、売却や買い替えなどには税金は切っても切ることが出来ず、事前のシミュレーションなどによる充分な検討が必要不可欠です。

日本クレアス税理士法人では、相続対策のサービスメニューとして、「不動産診断サポート」や「相続税シミュレーション」があり、路線価改定があった月はこのようなシミュレーションのご依頼が増えています。

初回は無料にて相続に対するご相談を承っております。相続対策でお悩みの方は是非一度ご相談ください。

<問合せ先>
日本クレアス税理士法人
電話:03-3593-3243
お問い合わせフォーム:https://creas-souzoku.com/free-consultation-form/

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。