リスクを積極開示する新制度「KAM」2月期までに適用
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監査人が監査で注意した項目を示す新制度「KAM」(カム、Key Audit Mattersの略)が2021年3月期決算から始まり、2022年2月期までに全上場企業に適用されます。
企業買収に伴うのれんや事業損失に備えた引当金など、財務リスクの詳細が6月末にかけて約2400社で開示されますが、AOKIホールディングスやソフトバンクグループなどすでに開示を行っている事例も出ています。
監査の信頼向上に向け一歩前進する新制度「KAM」について見てみましょう。(参考:日本経済新聞/2021年6月25日)
KAM導入の狙い
KAMとは、「監査上の主要な検討事項」を意味し、監査人が有価証券報告書内の監査報告書に特に重要と考えた事項や財務リスクが高い項目とその理由、監査でどのように対応したかを記載する制度です。
海外では先行して導入されていましたが、日本では2015年に発覚した東芝の粉飾決算をきっかけに金融庁が提言。日本経済団体連合会、日本監査役協会、日本公認会計士協会などによる意見交換を経て、制度の導入が決定しました。
監査人による監査報告書はこれまで財務諸表が適正かどうかを示すにとどまり、監査がブラックボックス化していると指摘されていました。不正会計が世界的に問題となる中、監査の透明性を高め、信頼向上につなげるのが狙いです。
KAMの開示例
すでに50社超の上場企業がKAMを早期適用しています。日本公認会計士協会による調査では、固定資産やのれん、引当金など見積に関する項目の開示が多い状況となっています。
三菱UFJフィナンシャル・グループ
監査法人である有限責任監査法人トーマツは、以下の2点をKAM としました。
(1)貸出業務における貸倒引当金の算定
(2)買収・出資に伴うのれん及びその他の無形固定資産の評価
三菱 UFJフィナンシャル・グループの貸倒引当金残高は2020年3月末時点で7,406億円あります。貸倒引当金において、特に注目すべき点は下記の記載内容です。
「新型コロナウイルス感染症の拡大に対する貸倒引当金の計上額(以下、「追加引当額」という。)は、貸出先企業への当該感染症拡大が及ぼす影響を考慮し、貸出先の財務情報等に未だ反映されていない信用リスクの増大を見積ることにより算定されている。」
新型コロナウイルスに関する引当金については、見積の不確実性や経営者の主観によるところが大きく、計算にずれが生じやすいため、監査上の主要な検討事項としているのです。
企業のメリット・デメリット
監査が透明化することで損失を隠そうとする力が弱まり、内部統制上も管理会計の観点からも、損失リスクを早く正しく認識するよう組織の意識が変わります。それにより組織全体として経営の能力アップが期待されます。
反面、監査費用の増加は大きなデメリットと言えます。
日本経済新聞社 による主要100社の2020年3月期監査費用は、1,365億円と前年と比べて
5%増であり、今後も増加傾向は続くと見られています。
KAMの導入により監査時間が増加するため、監査費用も増加してしまいます。特に、減損の兆候などどこまで開示するべきかについて、経営陣とのすり合わせに時間を要するものと予想されている状況です。
KAMのメリット・デメリット、また早期導入したトヨタやソフトバンクの事例など、詳細をコーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングのWebサイトでレポートしています。合わせてぜひご参考ください。
●〇● 【KAMとは?コロナの影響受け、損失リスクを積極開示】CAレポート
┗ https://co-ad.co.jp/topics/report-key-audit-matters/