ソニー、多様な事業強みに
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ソニーは、年末商戦向けに発売する家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」の発表会を6月12日に開きました。
高速通信規格「5G」が普及する前に、処理能力の高さを売りにした専用機を投入し、GoogleなどGAFAが力を入れるクラウドゲームに先んじるのが狙いだと言います。
先月19日には、オンラインで経営方針説明会を開催。
代表執行役会長兼社長CEO 吉田憲一郎氏は、「事業ポートフォリオの多様性は、経営の安定性にもつながっている。これをソニーのさらなる強みとすべく、グループ経営の強化を継続する」と語り、来年4月に誕生するソニーグループの経営施策を明らかにしました。
コロナ禍によって、企業がさらに先行きが見えない環境で舵取りを迫られている昨今。
日本有数のグローバル企業、ソニーがコロナ後の世界で強みを発揮できる準備を整えています。
今回の【ビジネスEYE】では、ソニーが展望する「新しい世界」について注目してみましょう。(参考:日本経済新聞/2020年5月8日)
■1.事業をスリム化する一方で
ソニーはスマートフォンやパソコン事業で必要なら損切りすると証明し、投資家に支持されてきました。しかしながら「冷静な戦略家」との異名を持つ吉田社長は、単にソニーをスリムにしただけではなかったようです。
古くから世界ナンバーワンの座を確保してきたソニー製のイメージセンサーは、自社のデジタルカメラやビデオカメラ分野だけでなく、Apple社製品にも採用されてきました。
売上の80%がスマートフォンのカメラのセンサーであることから、スマホ需要ともに市場の伸びが見込めないことがわかると、長期的に成長分野とされる車載用や医療機器事業への利用でシェアを伸ばせるよう画策しているそうです。
このイメージセンサー事業に関しては、自社のブランドではなく部品メーカーとしての成功に過ぎなかったため、物言う株主として有名なアメリカのヘッジファンドであるサード・ポイント社から幾度となくスピンオフ(分離独立)を迫られていたことはご記憶に新しい方もいらっしゃるかと思います。
その圧力に勝ち、複数事業のポートフォリオが生む価値を主張し続けるのが新たなソニーの姿です。そこに創業当時からの偉大なるエンジニア像はもはや見て取れず、ソニーの描く未来に疑いを持つ声も少なくないことでしょう。
吉田氏の言葉を借りれば、コロナ後の世界では「世の中の価値観は大きく変わるだろう。
本当に大事なものはなにか、ということを世界中の人たちが考えている」のであり、創業者である故・盛田昭夫氏の掲げてきた長期視点に基づく経営に回帰したのではないでしょうか。
単なるスリム化で終わらないところに、今回のソニーの方向性が確かなものとして感じられました。
■2.シナジーの実現がカギ
これまでのソニー像から変化したために、一部投資家からの評価が芳しくないこともあったようですが、ハードウェアとアニメやゲームなどのエンターテイメントでの相乗効果が表れ始め、売上高は2012年の7.3兆円から2018年に8.9兆円へと回復しています。
そして、イメージセンサーに世界初のAI(人工知能)処理機能を搭載した商品を販売。
イメージセンサーの半導体については2019年に続いてMicrosoft社との協業を発表するなど、新たな価値をもたらすAIソリューションを提供し、さらに新たな領域へと展開できる素地を模索しているそうです。
本来であればクラウドゲーム分野で競合となるMicrosoftとの協業も、別の事業では手を結んで双方成長していこうとする貪欲さに、逆に好感を持てる印象を受けました。
今存続する事業を単独で完結させるのではなく、生命保険事業においてソニーのお家芸であるテクノロジーを活用するなど、さらなるグループ内シナジーも視野に入れているようです。
テクノロジーのインパクトがコロナで曇ったことは確かです。良し悪しの判断は非常に難しくなっているでしょう。しかしながら、世の中の健康や安全については、現状維持以上に大切にされる傾向が強まり、ソニーの医療関連製品や保険事業はコロナ後の世界に隠れた強みを発揮するかもしれません。
吉田氏はあらゆるモノがネットにつながる「IoT(インターネット・オブ・シングス)」について「(モノに知性が備わる)インテリジェント・オブ・シングスへの過程だ」とも語っています。コロナ後の新しい世界に欠かせないであろうリアルタイム、リアリティ、リモートといった手段がソニーによって解決に導かれるのもそう遠くはなさそうですね。
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新型コロナウイルスの感染「第2波」が懸念される中、企業には感染予防という新たな制約が課され、戦う土俵が変化することは必至です。
進化か、退場か。危機を乗り切るには過去の名声にこだわらず、ソニーのようにビジネスモデルを転換しながら多様化することが一つの答えと言えます。
また、この多様化はソニーのような大企業にのみ言えることではありません。
私が会計士として連載しているコラム『会計の羅針盤』の最新回では、中小企業がコロナ禍による大廃業時代を生き抜き、多少なりとも成長するためには「収益のマルチチャネル化」つまり、多角化がポイントであると解説しています。
それでは中小企業でどうやって多角化するのか?
一言で言いますと「隣地を攻める」ことに尽きるかと思います。
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