中村亨のビジネスEYE

世界に拡大「TikTok」の次の一手

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コロナ禍により緊急事態宣言が発令され、自宅PCの前や、手元のスマートフォンを凝視して最新情報に思いを巡らす時間が増えています。

外出自粛で消費行動が閉塞的になり「リテール・アポカリプス」なる小売業の倒産危機も叫ばれている今、積極的に世界展開を拡大している企業が動画投稿アプリ「TikTok」を運営する中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)です。

今回の【ビジネスEYE】では、アジアや欧州で買収を重ねるほか、ネット銀行にも触手を伸ばしているバイトダンスが狙う今後の展開に迫ってみましょう。

(参考:日本経済新聞/2020年3月27日)

 

世界で種まく「TikTok」

「TikTok」は2017年に日本に上陸し、15秒ほどの短いダンス動画などを流すSNSとして若者に支持されてきました。この2月にはアプリのダウンロード数でゲームを除いた世界首位になるなど、世界中で順調に利用者を増やしています。

もともとバイトダンスの事業は、中国国内向けのニュースアプリが主力でしたが、2016年にヨーロッパで人気を集めた動画投稿アプリ「Musicl.ly(ミュージカリー)」を模倣し、現在のTikTokにつながるサービスを開始しています。

2017年にはミュージカリーを約10憶ドル(1100億円)で買収。中国が誇るユニコーン(時価総額1000億円を超える非上場企業)の名を手にしました。

TikTokの利用者は、ミュージカリーが抱えていた欧州を始め、日本や東南アジアでも広がり、全世界で5億人を超えています。30か国以上に230のオフィスを展開し、外国人従業員比率を21年までに50%に引き上げる計画を持つバイトダンスが次に力を入れるのが海外事業です。

■狙うは「2匹目のどじょう」

インターネット業界において、マネタイズ成功のカギは、広告・Eコマース・ゲームに集約されると言われます。いずれもバイトダンスが課題を抱える分野です。

米中摩擦やコロナ禍による経済減速でTikTokにおける広告は頭打ち、自社開発のEコマースでは中国版のAmazonとも言われる「アリババ」の後塵を拝し、ゲームでは売上高世界一を誇る「テンセント」に迫るような人気タイトルを開発できていないなど、今後も試行錯誤が続きそうな様相を呈しています。

そんな試行錯誤の光明となりそうなのが、海外展開だというわけです。

バイトダンスは現在、TikTokに続く「2匹目のどじょう」を狙うべくインドやインドネシアでニュースアプリの企業などに出資しているほか、1月にシンガポールでネット専業銀行の免許を申請したことが明らかになっています。

TikTokで獲得した大量のユーザーに金融やネットメディアなどの幅広いサービスを提供し、会社の収益につなげることでさらなる成長を目指しているわけです。

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コロナ不況の足音が聞こえてくる今、インターネット、デジタル分野は確実に重要性を増してきています。

これまでにも問題を解決するために数々のデジタル変革が成されてきましたが、今以上にそれが必要なときはないでしょう。

バイトダンスの多様なM&Aをきっかけに、さらに変革が進むのだとしたら…
経営者として目が離せないと言わざるを得ませんね。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。