人生が変わる お金の大事な話

【Story15】不動産投資のメリット、デメリット

28歳のとき、僕は都内の中古マンションの一室を660万円で購入した。当時の僕には、少しの預金があったが、融資を受けるノウハウがなかったので、全額を自己資金で購入した。
実際には融資を受けるノウハウを心配するよりも、「この僕に銀行がお金を貸してくれるのだろうか?」という不安感のほうが強かった。だから、銀行へ行くことをはなからあきらめていた。


最初に購入した物件は渋谷にある13平方メートルのワンルームで、場所がすごくよかった。入居者もついている。めったにないチャンスに思えた。
「そういう物件をよく相手が売りましたね」と言われることがあるが、売り主は借金を返済するために物件を売却しなくてはならない状態にあったのだ。
僕は現金で買っているので、借金の返済はない。大家になった僕に入ってくる家賃は月7万円だったが、諸経費が毎月1万円強かかるので、手元に残るお金は年間70万円くらいになる。物件価格が660万円なので、利回りは約10%。


家賃収入は自動的に入ってくるお金で、自分で働いて稼ぎ出したお金ではない。いわば不労所得だ。そういうお金を毎月、不動産が生み出してくれている。僕のルールでは、その1割は自分で自由に使えるお金だ。もちろん残りの9割は自己投資や次の投資に回すお金になる。
不動産投資は、株式投資よりも堅実に、毎月の「キャッシュ」を生み出してくれると僕は思っている。
しかも不動産投資は、副業でできるというメリットがある。


会社員でも会社の社長でも、そして主婦でも、本業の合間に行える。実際に僕は本業の合間に物件を探したり、管理会社と連絡をとったりし、不動産を買ってから自分の時間を大きく割いて何かをしたということもない。
デメリットは金額の大きさだが、星さんからアドバイスされたように、勉強したり調べたりしてリスクを抑える方法さえ知っていれば、金額が大きいこともリスクにはならない。


また、地震や火事、家賃滞納などの問題もあるが、このリスクを回避する方法もある。
地震保険や火災保険によつて、ある程度はリスク対策が取れるし、滞納には家賃保証や滞納保証という仕組みがあるのでそれを使えばいい。
リスクがゼロになることはないが、継続的に続く家賃収入というリターンに比べたら、リスクはかなり小さい。それに自分の力でリスクを小さくできる投資、それが不動産投資だと思う。


星さんはさらにこんなアドバイスもくれた。
「不動産投資の最大のポイントは、どの物件をどのように買うかにかっている。本当にいい物件というのは1000件に1件しかない」
「1000件に1件―しかも成功の秘訣はいい物件をいい条件で買うことなんですね」
「そうだよ。一般的にいい物件であっても、それを5年融資で買った場合と、20年融資で買った場合では、毎月のキャッシュフローが違うだろう。さらに借入金利が2%と5%でも、全く違う投資になる。そういう収支計画を購入する前に立てて、よりよい条件で購入すること、それが成功するポイントだよ」
僕は星さんから学んだことを念頭に、不動産投資を始めた。


物件購入まで2年、300件以上を見学

不動産投資は最初にうまくいかないと、大変なことになる。とくに借り入れまでしてハズレ物件を買ってしまった場合は、返済ができなくて結局、手放さなければならない。
失敗するかしないかは、あらかじめ勉強したかどうかにかかっている。不動産の勉強をして、リスクを把握し、リスクを予測し、その対処方法を考える。そして熟慮したうえでリターンを得ることができると判断したら購入する。
さらに慎重さも必要だ。だから不動産投資で成功している人は、みなたくさん勉強し、たくさん調べている。周囲にいいブレーンがいることも成功の一つの鍵だと思う。


不動産を購入して失敗してしまったとしても、自宅購入だったらまだいいかもしれない。自分が住んでお金を払っているわけだから。家賃に換算すれば本当は毎月10万円でいいところを、12万円払っているといった感じだ。
それに、失敗は自分の不見識が原因だし、自分が生活するための空間は確保できているので、がまんのしようがあるだろう。
でも投資用物件として買った場合、他人に貸してお金を得ることが目的だ。なのに、毎月10万円、30万円ものマイナスになってしまったらつらいと思う。自分が損をして他人に住んでもらっているということになる。


でも、そうやって損をしている人が世の中にはたくさんいる。
だから、たくさんの勉強をして、不動産知識だけでなくファイナンシャルリテラシー(お金の知性)を身につけ、骨身を惜しまずにいい物件を探さなければいけない。


僕は最初の660万円の物件を買うとき、買うまでに2年の歳月をかけて、300件以上の物件を、自分の足でひたすら見て回った。
毎朝仕事に行く前に物件を見て回って、仕事の帰りに夜また行く。そういうことをずーっと続けていた。土日もほとんどドライブと称して茨城や山梨まで出かけて行ったこともある。
ネットの物件情報もほとんど見ていた。また、図面など資料だけなら毎月1000件以上は見た。仕事をする以外は、朝から晩まで物件を見るために時間を費やしていた。


この不動産見学には、僕は家族を巻き込んで、結構楽しんでやっていた。僕にはそのときすでに妻と子供がいたので、ドライブと称して家族で物件を見に行ったり、ついでに近くの美味しいレストランにも案内したりした。そうすると毎週末の物件見学は、家族のレジャー代わりになった。そうやって楽しむ方法を見つけることが、物件をたくさん見つづける秘訣だといえる。
そうこうするうちに、これまで見えなかったものが見えてきた。
自分で見て日を養ったり、経験という臨場感を積み重ねていったりしないと、不動産というものはわからない。


ハワイ暮らしを夢見て

僕が初めて物件を購入した2003年当時、不動産投資は少し話題にはなっていたが、個人で実践している人は少なかった。バブル後に不動産で痛い思いをした人が多かったせいかもしれない。不動産よりは株式投資のほうがもてはやされていた。
いまでも投資といえば、数万円単位で手軽に始められるので株式投資のほうが人気だろう。僕の感覚では100人いたら30人くらいが株に興味をもっていて、実際にやっている人が10人くらいだろうか。


不動産投資の場合は、興味をもっている人が10人くらいで、実際にやつている人が1人か2人、それくらいの数しかいない。
だから、不動産が金融資産として認められて、不動産が投資家の間でもっとメジャ―になるのは、もう少し先になると思う。
でも、アメリカでは「家賃収入=金融資産」「不動産=金融資産」として認知されている。


「不動産投資=危ない投資」というイメージのある日本でも、これからはもっと不動産投資をする人の割合が増えるのではないかと思っている。興味をもつ人が全員というわけにはいかないだろうが、いまよりも多くの人が、投資で不動産をもつようになると思っている。
一部の人には不動産投資というと悪いイメージがあるかもしれない。転売によって売買益を狙う、バブルのころの「土地転がし」を思い出すせいで。
でもいまはそんなことはない。不動産投資は「安定収入」や「年金」みたいなイメージになりつつある。保有しつづけることによって毎月決まったお金(家賃)を生み出すものと考えられている。


そして、不動産を上手に活用した人は、もっと豊かなライフスタイルを手に入れられるだろう。僕がめざしている星さんは実際に、経済的にも精神的にも豊かに暮らしているようだ。一日中、あくせく働いたりはしていないし、よく家族と旅行に出かけたりして「余裕」がある感じだ。リタイア後はハワイに移住したいなんて言っている。
僕はサーフィンが好きで今では海の近くにマンションを持っているくらいなので、ハワイで暮らせるなんて夢のようだ。