そうそう。。先週の話しですが、奥の深〜い投資物件がありました。
その物件は、新宿駅から徒歩6分程の、割と良い場所のオフィス物件でした。50平米以上の広いワンルームになっており、そのフロアは8戸ほどの全てがオフィス部屋になっていて、お風呂もないし、トイレと給湯は各階に一つの共同になっています。
築20年のこの物件は、外壁がタイル張りでなかなかきれい。管理人もいてピカピカではないけど、結構きれい。エレベータも二つあり、場所、管理ともに良い物件に見えました。
さらに、この物件、1,380万円なのですが、表面利回り15.9%、ネット利回り12.1%もあるんです。
もちろん、即、不動産屋さんに電話。。
聞いてみると、何件も問合せがあって、売主が売りを急いでいるとのこと。これは価格交渉が可能かと思い聞いてみると、本当か嘘かはわからないが、「満額で買いそうな人がいる」と業者は言う。まあ満額で買っても、山手線沿線、それも新宿駅から徒歩6分のこの場所で、この利回りでまわるので、悪くは無い。というより良い!
日を変えて3度ほどこの物件に行ってみるが、いつも管理人がいて、防犯カメラも付いていて、安全面でもしっかりしている雰囲気がした。テナントは司法書士事務所、税理士事務所、法律事務所などが入っているが、街金っぽい会社名のところもあった。まあ場所がらこういうものなのだろうと勝手に予測した。
人の出入りも多いので、スラム化するようなこともなさそうだし、不動産屋さんに色々聞いてみることに。
いつものように、
・売る理由
・家賃滞納の有無
・管理費、修繕積立金の積立金額
・最近の改修時期、その内容
・最近のトラブル
・テナントの業種 等々・・・。
これらを聞いてみると、なんかちょっと怪しい。なにが怪しいのかわからないけど、とにかく売りを急いでいる様子。家賃滞納が無いという証明に、現所有者の通帳のコピーまでくれた。こんなことは初めてだ。
普通、家賃がちゃんと入っていますよ!という証明に、自分の通帳のコピーを渡すだろうか?少なくともボクは渡さないし渡したくない。最初通帳のコピーを見たとき、一瞬安心したが、すぐに怪しい・・・なんでここまで出すのだろう?と不安に変わった。
さらに問い詰めると、売主は一ヶ月ほど前に競売で手に入れて、すぐ転売しようとしているらしい。ちなみにこの売主は不動産屋とのこと。これは通帳のコピーを見たときにわかったのだが、一ヶ月に10数件の家賃っぽい金額(5~20万円位が月末に何件も入っているので)が入金されている。その中の一つの物件を何故売りにだすのだろう・・?利回り12%以上まわるし悪くない物件なので、手放すんだったら、毎月5万円しか入ってこないような物件を手放したほうがいいのだろうか?と余計なことまで心配をするボクがいた。
さらに怪しいことが発覚。賃借人との契約書がすご〜く簡単なもので、オフィスなのにも関わらず、敷金1ヶ月、礼金ゼロという契約。通常オフィス契約は、賃借人が解約したいと申し出た日から4~6ヶ月後にならないと解約できない、という場合が多く、住居などでは一般的ですが、申し出から一ヶ月後に解約出来る、というのはまずありえない。
でもこの物件は、解約の申し出から一ヵ月後に解約できることになっていた。
そりゃ、ないでしょ・・・。
なんか契約自体がおかしい。不動産屋さんに聞いても「そんなものじゃないですか?」としか言わない。
これではらちがあかないので、自分で調べることに。
まず、不動産の登記簿を取りに法務局に。。初めて行ったのですが、受付のやさしいおね〜さんに教えてもらいながら、なんとかもらえた。確か一通1,000円だったかな?
ちょっとウキウキして、その場でゆっくり見ることにした。端っこのほうに座って、どれどれ・・。
ん?なんか聞いたことがある会社名が・・?気のせいかな??
その登記簿に書いてあった会社名は、なんと賃貸契約書に書いてあったテナントの会社名と似てるんです。まったく同じではないけど、
登記簿の前所有者・・・・・日本○○株式会社
テナントの会社名 ・・・・・ 有限会社○○商事
となっている。その○○という名前は、めったに無い名前で、偶然同じとは思えない。
物件自体に問題が無ければ、別に前所有者がだれでも良いのだが、この場合、前所有者(日本○○株式会社)は競売でこの物件を差し押さえられている。それもおそらく税金の未納だろうと思われる、大蔵省や都道府県からの差し押さばかりだった。で、一ヶ月ほど前に競売にかけられて、現所有者が落札したという流れのようだ。
さすがにこれには驚いた。でもここまできたら、とことん調べてやろう!という気になり、法務局にいたので、テナント(有限会社○○商事)の会社の登記簿を取ってみよう!
見てみても、ちゃんと存在する会社で、とくに問題もなさそう。
でも不思議なことが一つ。
それは、この会社ができた年。この会社(有限会社○○商事)ができたのは平成11年になっている。その年は、前所有者(日本○○株式会社)が初めて差し押さえをされた3年後。さらにテナント(有限会社○○商事)が設立時から同じ場所(今回購入しようと思っている場所)に本社として登記している。
これは、あきらかにおかしい。
だって、ボクが見せてもらった賃貸契約書は一ヶ月前に新規に結んだものだからだ。競売で落札された後、すぐに結んだ契約書という事だ。まあ前所有者が逃げてしまい、契約書も何もなくなったので、新たに結んだということも考えられるが、あまりにも都合が良すぎる。
ここまで調べたボクは、前所有者(日本○○株式会社)の登記簿も取ることに。。本社の場所が違うので、他の区の法務局に行き、登記簿を取った。まず、この会社は2ヶ月前に解散している。解散しているということはこの会社は存在しないことになる。(当たり前だけど・・)
もうかなり怪しんでるボクは、役員の名前をチェック!
前所有者の日本○○株式会社と、テナントの有限会社○○商事で、同じ役員がいたら、関連会社に違いない。でも・・・同じ名前は無い。う〜〜ん。。行き詰った。
でもこの○○という名前が同じだけで、十分にあやしい。。だってこんな名前、絶対ありえないもん!
でもココまできたら、なんとなくストーリーが理解できてきた。ボクの見解はこうだ。
前所有者がこの物件を買ったのが15年前。
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その時点では経営が順調だったのだが、10年前から悪化。
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悪化した頃、資金繰りが厳しくなり税金の未納が増える。
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税金滞納の為、大蔵省、都道府県からこの物件を差し押さえられる。
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倒産を予知し、新しい会社(有限会社○○商事)を設立。
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この物件に新会社の本社を置き営業開始。
おそらく利益の出ている事業だけ、新会社に移したのだろう。
ちなみに家賃は支払っていないとボクは思う。
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結局前所有者は税金を支払えず、物件は競売に。
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物件は現所有者に渡り、すでに入居しているテナントと賃貸契約を結ぼうとするが
もめた為に敷金一ヶ月、礼金ゼロという簡単な契約を結ぶ 。
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このテナントがトラブルを起こす可能性があるため、手放すことを決意。
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ボクが見た広告チラシで買い手を探している。
これが本当かはわからないけど、あきらかに怪しいところが他にもあるので、本質とかなり近いと思っている。
他に怪しいところって??
それは、競売での落札金額です。競売物件の落札金額は、ネットで調べられる。もちろんこの物件も調べました。そうしたら、売値1,380万円なんですが、競売での落札金額が1,210万円なんです。競売の場合、管理費未納が溜まっていたり、立ち退きに費用がかかったりと、数百万円かかる場合が多いのです。落札価格からたった170万円しか乗せなくて売りに出してるということは、よっぽど手放したいということが手に取るようにわかる。
もちろん170万円が丸々利益ではなく、管理費未納のほかに、この広告で売れた場合、不動産屋さんへの仲介手数料約45万円も支払わなくてはいけない。きっとトントンか赤字になっていることだろう。
そこまでして手放したい物件を買うというのはリスクが多すぎる。現所有者はボクより不動産投資の経験が長く、いくつも物件を持っているプロだ。ボクみたいな素人は利回りだけ見て買いそうになるので、簡単にだまされてしまうだろう。
この後、不動産屋さんに聞いて分かったことだが、テナントが支払わなくてはいけない「共有部分の水道費」の滞納が20万円以上あるらしい。水道代を何ヶ月も支払っていないテナントが家賃をちゃんと払うはずがないですよね。。。
それにしても不動産は面白い!こういう裏を考えるのが大好きなボクには、クセになる(って言うか既にクセになっている)。一度くらい大きくだまされて勉強したいけど・・・でもだまされたくない。。どっちだろう??
このコラムは2008年の情報を元に制作しております。