日本の個人金融資産は約1600兆円(2013年時点)。しかし世界の主要国と比べると、資産を有効に活かせていない実態が見えてきます。運用方法を考え直す時期に来ているようです。
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日本人の貯蓄と負債の平均はいくら?
日本人は貯蓄と負債をどのくらい持っているのでしょうか? 金融広報中央委員会の調査によると、平均貯蓄額は世帯別に見て、2人以上世帯で1101万円、単身世帯で798万円です。ただし、平均額は一部の高額貯蓄保有世帯の影響を受けて、実態よりも高い金額になる傾向があります。
このような平均値の持つ欠点を補うために貯蓄の少ない順から多い順に並べて真ん中に位置する世帯の貯蓄額(中央値)を用いて一般的な家計像をとらえることができます。世帯別に見ると、2人以上世帯の平均貯蓄額の中央値は330万円。単身世帯の平均貯蓄額の中央値は100万円となっています。
平均貯蓄額
2人以上世帯で借入金のある世帯の割合は39.8%です。借入金の平均額は借入金のない世帯も含む全世帯では546万円、うち借入金のある世帯のみの平均額は1461万円となっています。
単身世帯で借入金のある世帯の割合は20.9%です。借入金の平均額は94万円、うち借入金のある世帯のみでは464万円となっています。
借り入れの目的では2人以上世帯では「住宅取得や増改築のため」が63.6%と最も多いですが、単身世帯では、日常生活資金と回答した世帯が34.0%と最も多くなっています。
2人以上世帯の借入額の平均
単身世帯の借入額の平均
貯金中心の日本人
日本人の個人金融資産は総額約1600兆円にも達していますが、この資産をどのようにしているか見てみると、「現金・預貯金」の割合が53.5%を占めており、「株式」「投資信託」「債券」は15.1%となっています。
一方米国では52.5%が「株式」「投資信託」「債券」、ユーロ圏などでもバランスよく組み合せて資産運用をしており、世界的にみても日本人は元本保証の預貯金割合が高いことがわかります。
家計の金融資産構成の国際比較
日本人はなぜ「現金・預金」が好きなの?
日本人がこれほどまでに現金・預金が好きなのは「不安」だからだと、指摘する人もいます。
日本人のほとんどが老後に不安を抱え、若い世代ほどその不安心理を強く持っています。そして、不安になればなるほど財布のヒモは堅くなる。世界でみれば高齢者になるほど金融資産は目減りしていくのが普通ですが、日本人の場合はその逆で、死ぬ間際まで増えていくといいます。
日本人の個人金融資産は約1600兆円にものぼり、これはGDPの約3倍。GDPの約3倍もの額の個人金融資産を保有している国は、世界では日本だけ。
例えば、約1600兆円の5%は約80兆円ですが、これは日本の税収の約47兆円程度をはるかに上回ります。このことをみても、個人金融資産の額の大きさが実感できます。
ところがこの約1600兆円のうちの約半分が、1%以下の低金利の定期預金や郵便貯金に預けられている状況です。これではせっかくの資産は増えず、増えた分が有効活用されることもありません。
日本人の不安心理を取り除くことができれば、「貯蓄から投資へ」の流れが起き、日本経済の活性化への大きなインパクトとなるはずです。私たち生活者も、このことを意識してみる必要があるのではないでしょうか。
低金利の預貯金ではお金は増えない
金利水準を比べてみると、日本の金利は依然として超低金利であり、先進国の中でも最低です。(2013年11月現在)。
仮に100万円を10年間預金した場合、日本とアメリカとでは約21万円もの差がついてしまいます。このような環境下では、預貯金に頼っていても資産は増えません。人生を楽しむためにも、バランスよく投資を取り入れた資産運用をしていくことが望まれます。
100万円を10年間預けるとどうなる?
世界の主要国の金利
何気ない普段の行動が、お金の生活習慣病につながるおそれもあります。長い間の習慣は自分では気づきにくいもの。診断テストで自己分析して、改善策を考えてみましょう。
日頃の行動、考え方がお金の生活習慣病の原因に
生活習慣病の原因が毎日の食事内容や食べ方などにあるように、日頃無意識に行っているお金の扱い方が、「お金の生活習慣病」へとつながっていきます。「なかなかお金が貯められない」という人は、お金の貯め方などのノウハウよりも、日頃の習慣や考え方による影響を見直してみましょう。
例えば、「お金の生活習慣病」にかかっている人の特徴として、次のような習慣・考え方があげられます。
- 新聞やニュースをあまり見ない。
- 銀行口座から、いつ何の料金が引き落とされるか把握していない。
- 店員(営業マン)にすすめられるとつい買いたくなる。
- 冷蔵庫の中に賞味期限切れの食品がある。
- 部屋の中が片付いていない。
- やりたいことはたくさんあるが、ほとんど手を付けていない。
お金を貯めたり増やしたりするのに大切なことは「情報収集・分析」「計画・段取り」「決断・実行」などです。新聞を読んで社会情勢を把握することはもちろん、自分の預金通帳の中身をちゃんとチェックすることも「情報収集・分析」の一つです。
また、「計画・段取り」ができなければ、予定外の出費をしてしまったり、ムダを発生させてしまいます。「決断・実行」も大事です。やりたいことがあるのに実行に移せないのは、自分にとって何が大切か整理できていないから。部屋の中やタンスの中身を整理することから始めてみるのはいかがでしょうか。
お金の知性は習慣にしなければ身に付かない
お金に関することは、人生においてかなり重要な事柄であるにもかかわらず、学校で教えてくれることはありません。
高い教育を受けた人でも、利息が付くことを知らずにクレジットカードのリボ払いを利用していたり、手数料を確認せずに投資信託を買ったり、お金に関するミスを犯している例はたくさんあります。
お金に関する知識やスキルは、生活するためのスキルとして、衣食住と同じくらい大切なものなのです。人生にとって非常に重要度の高いスキルですから、一長一短で身に付くものではありません。習慣的に練習して身に付ける必要があります。
スポーツ選手が基礎体力を養い技術を身に付けるために地道な努力をしているように、お金持ちもお金の知性を身に付けることを習慣づけています。
お金の基礎体力を身に付けていない人が、いきなりお金を増やそうと思うのは、フルマラソンを6時間かけて走る人が「今日は3時間で走る」と言っているのと同じようなこと。無謀なのです。
しかし、練習すればいずれは走れるようになるかもしれません。
株式投資などお金の運用も同様です。上達するにはしっかりと練習することが必要なのです。
ファイナンシャルアカデミーでは、もっと経済やお金について学びたい人におすすめのセミナーを開催しています。