ローン地獄を避けるために:『マンションを買うまでに読む青本』vol.1

2019年8月22日

マイホームを買おう!と思ったら、多くの人がまず気になるのが「住宅ローン」のことかもしれません。一生の中でも1、2位を争う大きな買い物といわれる住宅購入をギャンブルにはできませんよね。前シリーズ『マンションが買いたくなったら読む赤本』でマンション購入を決めた山田さんのお宅の事例を通して、住宅ローンを利用するときのポイントをおさえましょう。

夢のマイホームとローン地獄

「借りられる金額」と 「無理なく返せる金額」の違い

年収600万円の山田翔太(35)・美香(33)夫婦の場合

翔太:家を買うときは住宅ローンを利用したいとなんとなく考えていたけれど、具体的にはどれくらい借りることができるのかな。

美香:雑誌や本では年収の5倍だとか、月々の返済額が月収の25%までだとか書かれているけれど真に受けていいのかしら。

マイホーム購入を決めたとき、まず確認しなければいけないのが「いくら借りられるか」です。ただし、「借りられる金額」と「返せる金額」は違います。借りられる上限のお金を借りてしまうと、ローンに追われて生活が苦しくなります。「無理なく返せる金額」を知り、予算を考慮してから物件選びをすることが大切です。マイホーム購入時にはほとんどの人が住宅ローンを利用しますが、「借りられる金額」は、年収の約5倍が一般的とされています(年収の多い人ほどより多く借りられる仕組みになっており、これを「収入基準」と言います。収入基準は各銀行で異なります)。

例えば年収600万円の山田翔太さんなら、600万円×25%=150万円以内(月額12万5,000円以内の返済)、年収500万円の人なら、500万円×25%=125万円以内(月額約10万4,000円以内の返済)に年間返済額が収まるよう、ローンを組むことになります。35歳のサラリーマン(年収600万円)・山田さん(妻・子どもの3人家族)が返済期間35年の住宅ローンを組むとすると、借りられるお金は最大で150万円×35年=5,250万円。返済期間を30年にすると、150万円×30年=4,500万円になります。

返済額の目安としてよく耳にするのが「年収の25%」という数字ですが、返済する側にとっては少し厳しい数字です。たとえば年収600万円、手取りの月収が約35万円の山田さんの場合、月12万5,000円をローン返済に充て、さらに管理費や修繕積立金を約3万円支払うと、残りは19万5,000円。この中から食費や水道高熱費などの生活費、生命保険料、育児費、医療費、税金、冠婚葬祭費などを捻出することになります。となると、あまり贅沢はできません。年収の20%なら、月のローン返済額は10万円となり、先ほどの例と比べて毎月2万5,000円の余裕ができます。将来増えるかもしれない第2子、第3子のことを考えると、無理なく生活していくためにも、返済額は年収の20%以下に抑えるほうが賢明と言えるでしょう。

頭金は、最低でもどれくらい必要か

「頭金」とは、購入物件の代金に充てる自己資金のことです。家を買うときは、「頭金をいくら出せるか」がとても重要です。頭金が多ければ多いほどローンで借りるお金が少なくて済み、その後の負担が軽くなるからです。一般的に言われる頭金の目安は、物件価格の2割程度。たとえば4,000万円の物件なら、800万円用意しておくということです。もちろんそれ以上出せるなら、それに越したことはありません。一般的な住宅ローンの場合、物件価格の8割までが融資枠なので、最低でも2割は自己資金を貯めておきたいところです。ただし金融機関によっては9割、または10割まで融資を受けられる場合があります。

諸費用は物件価格の 1 割かかる

マンションを買うときにもうひとつ忘れてはならないのが「諸費用」です。諸費用とはマンション購入時に発生するローン保証料や税金、印紙代、融資手数料、登録免許税、司法書士に支払う登記手数料などの費用のことで、引っ越し代なども含めると、物件価格の1割程度かかります。これらは一時金としてまとめて払うものなので、頭金とは別に準備しておく必要があります。

翔太:つまり、マンション購入には住宅ローンと頭金と諸費用がかかるわけか。このうち頭金と諸費用は自己資金でまかなうことになるから、貯金を切り崩さなくちゃいけないね。

美香:でも、手元にある資金をすべて住宅購入に当ててしまうと、万が一の災害時や子どもが病気をしたときなど、いざというときに不安だわ。予備資金として、最低でも3カ月から半年分の生活費は残しておきたいわね。

▶︎vol.2に続く

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【出典・参考文献】

山崎隆『東京マンション資産価値予測 DATA BOOK』(ダイヤモンド社)

泉正人 cafeglobe「美マネ experience」

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