一度、ためしに、小さく負けてごらん うらおもて人生録

著者:色川 武大
出版社: 新潮社; 改版 (1987/11/30)

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こんな人、こんなシーンにおすすめ

  • なかなか投資で成果が出ない人
  • やることなすこと全部裏目に出てしまう人
  • 「自分は人生恵まれていない、リア充な人が羨ましい!」と思ってしまう人

「麻雀放浪記」の著者のライトかつディープな自叙伝

「麻雀放浪記」などの著作で知られる阿佐田 哲也さんの自伝的エッセイです。
飲み屋でいっぱいやりながら、新入社員に人生について語ってくれるおじさん、という切り口の本で、とても読みやすいです。
その半面、阿佐田哲也さんの酸いも甘いも噛み分けた激動の人生から得られた教えが随所に光っている、素晴らしい本です。

常に大局的な目線で人生の損得を捉える

私が学生の頃、麻雀関連本と言えば「哭きの竜」か西原 理恵子の「まあじゃんほうろうき」で、ちょっと上のお兄さん世代は「ぎゅわんぶらあ自己中心派」が代表的な読み物でした。

それで「麻雀放浪記」とか「坊や哲」(=登場人物、主人公で阿佐田哲也自身がモデルと言われる)と言うと、ちょっと大人っぽい感じがしたものでした。

この「うらおもて人生録」ですが、自身の人生を振り返ってみて、人間が生きていく上で必要な「セオリー」(=原理原則、スタンス、フォームのようなもの)について語っています。


印象的だったのが
「人生のバランスシートを重視すること」
という言葉です。

人生のバランスシートとは、「勝ち負け」「運・不運」といった貸し借りをどうバランスさせていくか、というもの。

例えば、商売で大成功して大儲けしたとしても、その陰で、人格が崩壊したり(=とっても嫌な奴になってしまったり)、家庭が崩壊したり、健康を損なってしまった場合は、「人生トータルでは大きく負け越し」と考えるわけです。

一方面で大勝ちし過ぎると、必ずそこには「陰」が生じる。

その陰をどうコントロールするかが、結果として人生全体をコントロールすることになるという、非常に奥深いところを語っています。


これは、
「人間が持っている運の総量は一定である」
「因果応報」「人間万事塞翁が馬」
という考え方に通じるところで、理屈や理論では到底説明できないと思いますが、自分の人生を振り返ってみても素直に吸収できる考え方でした。

例えば、同じ麻雀の勝ち負けでも、上手な勝ち方・下手な勝ち方、上手な負け方・下手な負け方ってあるのですよね。

私も学生時代に麻雀をやったことがあるのですが、たとえば相手に恨みを買うような勝ち方は下手な勝ち方です。

その場は勝って嬉しく感じたとしても、自分のいないところで悪口を言いふらされて評判が落ちるようであれば、負けた方が良いくらいかもしれません。
「接待麻雀」なんていう言葉に表されるように、わざと上手に負けて相手を気分よくさせて、その代わりに試験前になったらノートを借りるとか、出席を代返してもらうとか、など融通を利かせてもらうのであれば人生トータルでは勝っているのかもしれません。
投資も同じことですよね。

今年、仮に投資で100万円儲かって「お金が増えた」と喜んでいても、それで調子にのって10年間で1,000万円損してしまえば900万円の負け越しですし、儲かった100万円で海外旅行に行ったところで強盗にあって大ケガしてしまえばお金がない方が良かったと思えてきます。

常に大局的な目から、
「今日の損失は、自分の人生トータルでどんなプラスがあるのか?」
を見ることができれば、小さな失敗に一喜一憂しなくなるのではないか、と思います。

特に投資は、思い通りにいかない相場が続く、不遇な時期の方がむしろ長いのが当たり前です。
そんな時期は、

「こういう困難な時期に巡り会えたのは、実は人生トータルではプラスなのではないか?」
「今回の失敗を、どのようにプラスに活かそうか?」

と前向きに捉えることができれば、どんなときでも前向きに取り組めるのかもしれない。

そんなことを考えさせられる一冊でした。

書籍の評者

束田 光陽
ファイナンシャルアカデミー認定講師 ・不動産投資家

サラリーマン生活に不安を感じ26歳で不動産投資を開始。現在までに通算30件の物件を取得。総資産5億円、年間家賃収入は4000万円。自身の経験に加え1万人以上に教えた経験をもとに展開する授業は抜群の説得力。受講生評価も常に高得点をマーク。

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束田 光陽